平山洋介『東京の果てに』読了

 http://blogs.dion.ne.jp/morningrain/archives/8222589.htmlで紹介した新書の『住宅政策のどこが問題か』が面白かったので読んでみたのが、同じ著者のこの『東京の果てに』。この本の第3章がちょうど『住宅政策のどこが問題か』と同じ内容なのですが、それ以外にも近年の東京の変貌を豊富なデータを使って分析した本です。
 バブル崩壊後、いったんはその勢いを失った東京ですが、民間活力の導入、容積率の緩和といった政治面の後押しを背景として「国策」としての開発が進んで行くことになります。
 そんな再開発の中で登場した六本木や汐留などのホットスポット、一方でバブル崩壊とともに凋落した郊外のコールドスポット。開かれたものとしての都市と、周囲から閉じて行くタワーマンション。ディズニーランドに代表されるテーマパークやさまざまなテーマパーク的な意匠を施された住宅などのファンタジースポット。これらの混沌たる東京の実情を描き出した本と言えるでしょう。


 内容としてもややまとまりがなく混沌とした部分があるのですが、この本の売りは、東京の変貌とそれが人びとに与える影響が、例えば住宅や墓などについての面積や所有のデータを通して明らかになっている点。
 ベビーブーマーが資産価値を持つ住宅を取得できたのに対して、バブル期に家を買ったその直後の世代であるベビーバスターは住宅購入により負債を抱えたことなど、データを通して改めて見えてくる東京と社会の姿があります。


東京の果てに (日本の“現代”)
平山 洋介
4757141092