『ミルク』

 時間があるうちに見たいものは見てしまえってことで、今日は『ミルク』を見てきました。
 アメリカで初めて同性愛者であることを公言して公職についたハーヴェイ・ミルクのお話を、ゲイであるガス・ヴァン・サントが撮ったというのがこの映画。
 アカデミー賞を獲っただけあって、ハーヴェイ・ミルクを演じたショーン・ペンの演技が素晴らしいです。ショーン・ペンは別にゲイじゃないと思うんですけど、仕草とかゲイっぽいし、それでいて政治家に必要な人を引きつける魅力もきちんと表現している。
 お話的には"Hope"や"Change"という言葉が活躍する、オバマブームとシンクロしたようなお話で、ちょっと前の『エレファント』や『ラスト・デイズ』では閉塞感に満ちあふれていた映画を撮っていたガス・ヴァン・サントがいきなりこの題材とは、ちょっと時流に乗りすぎじゃないか?という気もしますが、非常に勇気を与えてくれる映画です。
 やはりガス・ヴァン・サントはスマートですし、うまいとこありますよね。
 ただ、http://flowerwild.net/2006/11/2006-11-08_133443.phにある蓮實重彦の「ガス・ヴァン・サントだってかなりいい線をいっていると思っていますが、私のどこかに疑問が残っている。というのは、彼は映画作家というより、フィルムによる芸術家を目指しているんじゃないかという気がしているからです。」という発言は、何か今回の映画にも当てはまる気がしました。
 クリント・イーストウッドの映画に比べればもちろん、ダニー・ボイルの映画に比べても、ガス・ヴァン・サントの映画はどこか映画っぽくない気がする。