被害者理解プログラムの陥穽

 別ブログ(汝の隣人のブログを愛せよ | LOVELOG)でも紹介したのですが、非常に重要で興味深い知見だと思われるので、メモ代わりにここにも書いておきます。

 実証主義犯罪学が、最近発見したものの一つに、被害者の心情を理解させるプログラムが再犯を促進する可能性があるという知見がある。一見すると社会の常識に反する知見であるが、実証的に確認された事実である。しかし、これは、犯罪者といわれる人たちのことを理解すれば、ある意味当然の結果であるかもしれない。家族内殺人にかかわらず、罪を犯して刑務所に来る人たちの多くは、その行為と裏腹に、家族の中で、あるいは社会の中で孤立して傷ついて弱っている人が多い。彼らに、罪の意識だけを芽生えさせ、自ら引き起こした犯罪の結果の重大性に目を向けさせることは、ある意味「人を殺しておいて自分だけ生きていてよいのか」という思いを喚起するなど、心に大きな重荷を背負わせることになる。この重荷は、社会復帰において大きな足かせとなり、その重荷に耐えかねて再び挫折する結果をまねきやすい。罪の意識を芽生えさせ、重荷を負わせることが更生するうえでの道義上必要となることに異論はないが、そうさせたうえで、再犯を防止するためには、周囲からの強い支えが不可欠であることは忘れてはならない(浜井浩一編著『家族内殺人』37ー38p)

 実際のデータを見ていないので何とも言えない部分もありますが、これが本当なら重要な指摘でしょう。
 裁判員制度が始まる中で、こういった研究はどんどん進めるべきでしょうし、マスコミもこうした研究を積極的に紹介していくべきだと思います。


家族内殺人 (新書y)
浜井 浩一・編著
4862483887