ハロルド・ウィンター『人でなしの経済理論』

 トレードオフについて扱った本で、翻訳は山形浩生
 と書くと、わかる人には本書の内容が想像つくかもしれません。トレードオフという経済学の道具を使って世の中の常識的な考えに異議を唱える本と。
 内容的には基本的にその通り。人命の価値や臓器売買、そして企業はどこまで安全対策をすべきかという良識を持った人の神経を逆撫でするような話題から、禁煙の是非や著作権の問題といった議論がつづいている問題まで、トレードオフという新たな視点で分析してみせます。
 ただ、著者が提供するのはあくまでも見方であって、その処方箋までを提供するものではありません。その点でやや物足りない面もなくはないです。また、分析にも例えばレヴィットの『ヤバい経済学』のような切れ味はないですね。
 もっとも俎上に載せられている話題は面白いですし、何よりも読むことで「正論」を疑うトレーニングになる本です。


人でなしの経済理論-トレードオフの経済学
山形浩生
4862381324