ニール・ゲイマン『アナンシの血脈』

 http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20090317/p1で紹介した『アメリカン・ゴッズ』が面白かったゲイマンの長編が文庫で登場。
 今回も現代の世界を舞台に神々が登場する作品で、登場するのはアナンシという西アフリカの伝説の中の蜘蛛の姿をしている神。主人公の死んだ父親が実はアナンシだったというところからストーリーは始まります。
 アナンシの伝承と現代のストーリーを上手く絡めてユーモアで味付けて料理する。いかにもゲイマン的な世界が繰り広げられますが、『アメリカン・ゴッズ』に比べるとやや物足りない面も…。
 『アメリカン・ゴッズ』は、荒唐無稽な神々の戦いが、アメリカの歴史とリンクしていてそこに面白さがあったのですが、この『アナンシの血脈』には『アメリカン・ゴッズ』におけるアメリカ史のような背景のようなものがないんですよね。
 ストーリー自体は面白いんですが、それが『アメリカン・ゴッズ』のように何かを浮かび上がらせるようなことはないです。楽しさとしてはストーリーを追う楽しさしかない感じです。
 もちろん、それだけで十分だという人もいるでしょうが、個人的にはアメリカの歴史をあぶり出した『アメリカン・ゴッズ』に比べると物足りないです。


アナンシの血脈 上 (角川文庫)
金原 瑞人
4042971024

アナンシの血脈 下 (角川文庫)
金原 瑞人
4042971032