実名以前の問題? 光市母子殺害事件の実名本

 光市の母子殺害事件の犯行当時18歳だった少年の実名を記した本が出版され、話題を呼んでいるようです。
 朝日新聞の「光母子殺害実名本「安易に一線越えた」作家ら疑問の声も」という記事の2ページ目には以下のようなコメントが寄せられています。
 http://www.asahi.com/national/update/1008/TKY200910070491.html

元家裁調査官の山口幸男・日本福祉大名誉教授(司法福祉)は「少年法の立場に立てば、実名公表はありえない」との立場だ。「匿名でも、読者に目を開かせるという意図は達成できるのでは」と出版側の姿勢に疑問を呈した。

 この少年法の立場とは、少年法第61条の「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であること推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」という条文でしょうし、さらにその根本となっている第1条の「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。」という部分でしょう。


 ただ、この少年は死刑判決を受けているんですよね。
 死刑判決を受けているのに「健全な育成を期し」とか「性格の矯正」ってのは変ですよね。
 だから、ここで「少年法の立場」を持ち出されても…という気もします。
 

 もっとも、これは逆に少年法の対象となっている年齢の人間が死刑になるということのほうがおかしいのでしょう。
 この少年のやったことはひどいですし、弁護団の荒唐無稽とも言える弁護もひどかったと思いますが、少年法が存在し、「少年の健全な育成」をうたっている限り、やはり死刑判決には違和感も残ります。
 死刑の適用を二十歳以上にするか、あるいは18歳成人にして、少年法の適用年齢を18歳未満とするか、いずれかの形でこのねじれを解消することが必要だと思います。