『イングロリアス・バスターズ』

 昨日見てきましたけど、正直奇妙な映画だと思います。
 ブラッド・ピットが主役なのですが、正直、彼なしでユダヤ人女性の復讐劇という話にすれば非常におさまりのいい話だったでしょう。
 最初のいかにもタランティーノっぽいネチネチした会話とユダヤ人狩りから、最後の映画館でのカタルシス。たぶん『キル・ビル』のようなスカッとした話になったと思います(『キル・ビル』もvol2はそんなスカッとしたものじゃなかったけど)。


 ところが、ブラッド・ピット率いるアメリカ系ユダヤ人によるナチ狩り部隊“イングロリアス・バスターズ”が登場することで、なんだかよくわからない映画になってきます。なぜなら、この“イングロリアス・バスターズ”はほぼナチと同じ行動をする部隊だからです。
 サディスティックで戦闘が終わっても相手に対して容赦しないその姿はナチのSSと同じです。
 というわけで、観ているほうは「近年の映画において、ナチがいくらひどく扱っても抗議がされることがないために「安全な」敵とされている現状に対する批判なのかなー?」とも思います。
 ただ、そういう批判的な構図と映画の語り口みたいなものがまったく合っていないために、非常に奇妙な居心地の悪い印象を受けるんですよね。
 ラストなんかも「ナチ的なものは死んでない」というメッセージなのか?それとも悪趣味なおふざけなのか?


 酒場でのゲームからの銃撃戦とかタランティーノらしい興奮させるシーンもあって、面白いと言えば面白かったのですが、なにか収まりの悪い映画でもあります。
 個人的には前作の『デス・プルーフ』の方が断然好きです。


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