『借りぐらしのアリエッティ』

 ジブリの新作は監督が初監督の米林宏昌ジブリの監督というのはかなりプレッシャーのかかる立場だと思うのですが、今までのジブリの手法や遺産を生かしつつ、上手く撮っていると思います。
 ストーリーとしてはガール・ミーツ・ボーイもので、そのガールが小人で、ボーイのほうは心臓病の手術を控える体の弱い少年(それで声が神木隆之介というベタな設定!)。人間に見られてはいけないアリエッティが借りぐらしをする屋敷にやってきた翔という少年にその姿を見られてしまい…というもので、予想外の展開はないのですが、やはり映像がよい。


 特に最初の「借り」のシーン、お父さんとアリエッティが人間の家に忍び込むシーンは、お父さんの作ったラピュタ的の仕掛けもいいですし、何よりも小人目線で見た家とさまざまなものが上手く撮れています。
 台所のシーンは本当に素晴らしくて、食器などのスケール、静寂の中に響く水道などのさまざまな音、すべてがハマっています。ここだけでも見る価値がある映画だと思います。
 なので、後半にもこの台所シーンに匹敵する小人目線のシーンがあれば最高でした。
 後半は病気がちで厭世的な翔がアリエッティと協力して行動し始めるのですが、そうなるとどうしても俯瞰的なシーンが多くなってしまって、前半の小人目線ならではのダイナミズムみたいなものが薄れてしまうんですよね。
 

 全体的に今までのジブリ作品をなぞるような演出も多いのですが、そんな中でちょっと違うのがカラスのシーンと、樹木希林演じる家政婦のハルさん。特にハルさんは、”おばあちゃん=善人”的な価値観が強いジブリ作品の中ではちょっと異色の存在かもしれません。
 あと、雰囲気、展開に似た所があるので、『魔女の宅急便』が好きな人はたぶん気に入るような気もします。


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