ドガ展

 横浜美術館ドガ展に行ってきました。
 ドガはそれほど作品を見たことがなくて、バレエや競馬なんかの絵の印象しかなかったんだけど、今回、ドガ展を見てドガという画家の不思議さに感じ入りました。


 ドガは作品のための習作なども多くて、かなり下準備をしてから絵に取り掛かっているようなのですが、そのくせ全体を完璧に仕上げている作品は少なくて、書いてないなところはほんとにおざなり。
 例えば、「障害競馬-落馬した騎手」はサロンに出品した作品らしいですが、落馬した騎手への繊細な描き込みに対して、馬や他の騎手の描きこみは大胆というかある意味いい加減。落馬した騎手を描いた時点で、絵を完成させる意気込みを失ってしまったようにさえ見えます。
 また、作風の変遷もかなりのもので、初期のアングルばりのシャープで的確な線から後期のマチスを思わせるような大胆な線まで変化しますし、色彩も白っぽく明るい画面から黒く沈んだ画面まで、まさに何でもあり、最後まで線を捨てなかったという一貫性はありますが、それ以外はほんとに変幻自在。
 なのでドガは、努力の人なのか天才なのか、計画性のある人なのか気まぐれな人なのか、よくわからない存在です。おそらく、そういった要素をすべて持っていた人なのでしょうね。


 そんなドガなのですが、「エトワール」、「バレエの授業」といった作品は、これ以上ないというほどの完成度。構図、描き込み、色彩、すべてが完璧に見えます。
 他にも「画家の従姉妹の肖像」、「腕を組んだバレエの踊り子」、「画家マルスラン・デブタンとレピック子爵の肖像」なんかも印象的でした。