ワシントン・ナショナル・ギャラリー展

 印象派、ポスト印象派の作品が中心に80点ちょっと。ワシントン・ナショナル・ギャラリーは19世紀末から20世紀にかけて銀行家、実業家として活躍しアメリカの財務長官も務めたアンドリュー・メロンのコレクションがもとになっているそうなんだけど、さすがアメリカを代表する大富豪のコレクションだけあってかなりのレベル。
 マネ「鉄道」、モネ「日傘の女性、モネ夫人と息子」、セザンヌ「赤いチョッキの少年」など画家の代表作とも言えるような作品がズラリ。
 それでいて変に展示作品数も多くなくて、調度よい感じで見れました。


 今回のようにある美術館からいろんな画家の作品が出て来る展覧会だと、それぞれの画家の特徴がわかって面白いのですが、今回もいろんな画家を見比べることでそれぞれの画家の特徴が引き立ちました。
 例えば、マネの画面は本当に鮮やか。
 「オペラ座の仮面舞踏会」は真っ黒な服を着た男達が画面を埋め尽くしている構図なのですが、その黒も含めて本当に鮮やか。
 また、代表作の一つとも言える「鉄道」もこっちを見ている女性の姿は力強く鮮やか。けれども、背中を向けている女の子の姿は儚げでまるで幻のよう。二人の背中合わせの姿と存在感が画面に不思議な奥行きを与えています。


 一方、モネは鮮やかというよりは明るくてまさに「光」を捉えている。
 「ヴェイトゥイユの画家の庭」はまさに画面に光が溢れていますし、「日傘の女性、モネ夫人と息子」もそう。特に「日傘の女性、モネ夫人と息子」は煽り気味のアングルで描かれていて、写真ならありそうだけど絵画ではなかなか無いまるでスナップショットのような構図。筆使いは大胆で空の描きかなんて無茶苦茶のようなんだけど、美しく決まっている。
Claude Monet 011


 あと、印象派ではドガの「アイロンをかける女性」が、パッと見は地味で平板な絵に見えるんだけど、よくよく見ていくと奥行きがあって実は鮮やか。遠くから見ると、アイロンを掛けられている布地が輝いて見えます。


 セザンヌゴッホもそれぞれ何点が出ていて、ゴッホセザンヌの影響を受けていることがよく判る。
 ただ、セザンヌの「アントニー・ヴァラブレーグ」や「『レヴェヌマン』紙を読む画家の父」における厚塗りと、ゴッホの厚塗りというのはやっぱり違う。
 セザンヌの厚塗りは遠くから見ると意外にすっきりとしていて、近くで見た時とは違ってそれほど絵の具の存在感はない。
 けれどもゴッホの厚塗りは遠くから見てもすごい存在感。禍々しいほどに塗りたくられた絵の具は遠くから見てもそのタッチが伝わってくるようです。
 

 あと、意外によかったのがメアリー・カサットやベルト・モリゾといった女流画家の作品。
 特にベルト・モリゾはマネの描いた黒い服を着た肖像画があまりにも有名なため「黒」の印象がありますが、本人はむしろ白っぽい色を使うことを好んだようで、「姉妹」はそんな白さをうまく活かした作品でした。

 
 「日本人は印象が好き」というのはよく聞く言葉ですが、去年の「ボストン美術館展」や今回の『ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」を見ると、アメリカ人も印象派が好きなんだなって思いました。
 というか、印象派ってのは世界中の人に愛されるようなものを持っているのかもしれないですね。