「堀内誠一・旅と絵本とデザインと」 

 昨日の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」に引き続き、今日はうらわ美術館で「堀内誠一・旅と絵本とデザインと」という展覧会を見てきました。
 堀内誠一は、創刊時の『an・an』のアートディレクターで、他にも『BRUTUS』や『クロワッサン』のロゴなんかをデザインしたです。さらには絵本作家でもあって、谷川俊太郎石井桃子の絵本の挿絵を書いたりしていますし、オリジナル作品も書いてます。
 

 難波功士はその著書の『創刊の社会史』の中で、『an・an』や『POPEYE』での仕事に触れるとともに、その絵本について次のように述べています。

 書店で林明子堀内誠一の名のある絵本は、中身を見ずに即買しても、親にとっても子どもたちにとっても一度もハズレだったことはないのである。しかも、林明子の画風は一つで、表紙を一瞥すれば林のものだとすぐわかるのに対して、堀内の絵はそれぞれのタッチが異なっており、表紙の絵にひかれて作者を確認し初めて堀内作品だと気づき、改めて堀内誠一の多才にその都度驚かされるのである。(36p)


 最後に使われている「多才」という言葉については、今回の展示を見てまさにその言葉を思いました。
 雑誌のカットやロゴ、そしてイラスト的な挿絵が上手いということは知っていたのですが、今回の展示されていた数々の絵本の原画を見ると、「イラスト」といった言葉ではくくれないほど、さまざまな挿絵があって、絵本の中身に合わせて変幻自在です。
 

 1932年生まれの堀内誠一のデザインは19世紀末〜20世紀前半のヨーロッパの芸術家(パウル・クレーとかカンディンスキーとかマティスとかシャガールとか)の影響を受けていて、おしゃれだけど時にバタ臭い感じもします。
 『an・an』の醸しだすパリあるいはヨーロッパ信仰というのも堀内誠一の個性から着ていた部分もあるのかもしれません。
 ただ、例えば谷川俊太郎と組んだ絵本なんかではそういったバタ臭さがまったくなくなってて不思議。
 まさに変幻自在のセンスといった感じでした。


創刊の社会史 (ちくま新書)
難波 功士
4480064559