『モテキ』

 90年代のサブカルで育ってきた者としては超笑えたし面白かった!
 特に音楽の選曲はツボに入りまくった感じで、橘いずみの"失格”が流れたときには「キター!」って叫びたくなった。
 他にも主人公の森山未來演じる藤本がフジロックでふられて大江千里の"格好悪いふられ方"が流れたり、藤本がナタリーに入社したり、面接ですかさずTwitterをチェックされたり、TM NETWORKの"SELF CONTROL"が流れたり、ヒロインの長澤まさみとの待ち合わせがヴィレヴァンの前だったり、サブカルの王道というべきくるりの"東京"がやっぱり「ここぞ」ってとこで流れたり、ラストが"今夜はブギー・バック"だったり、とにかくサブカル系のツボをつきまくる演出で笑いが止まらない。
 劇中のライブシーンに出てくるバンドもN'夙川BOYSとか在日ファンクとかだし、藤本が弱ったときに聞くアイドルソングもAKBではなくて、ももいろクローバー。この辺もサブカル的な感性にドンピシャなんじゃないでしょうか?
 あと、B'zに対する評価なんかもいかにもで、麻生久美子に「もうB'zなんて聴かないから…」と言わせておいて、カラオケでは「ultra soul!」で大盛り上がり。まあ、サブカルの人ってこんなんですよね。


 映画はそんな音楽てんこ盛りの演出でほとんどミュージカルみたいなシーンもあるんですけど、それを見事に乗りこなしているのが森山未來Perfumeとのダンスのシーンをはじめ動きはキレキレ。前から普通の人の役がそんなりできるので上手いなと思っていましたが、これならアクションとかもいけそうですね。
 脇の女性は麻生久美子仲里依紗真木よう子と、これまたいかにもサブカル系が好きそうな女優が揃っているわけですが、問題は長澤まさみ。個人的には長澤まさみはかわいい時とそうでない時の差がはっきりしている女優で、役によってもハマったりハマらなかったりという印象でしたが、今回はかわいいしハマってる。最後のほうでは絶妙のヘタレ感も出ています。
 そして何と言っても森山未來長澤まさみといえば「世界の中心で愛をさけぶ」のコンビですからね。 
 

 そんなんで非常に面白かったんですけど、同時に「サブカル系人間としてそんなに笑ってていいのかよ?」と心の片隅で思わないでもない。
 「モテない」という問題を、いい車とかブランド物を身につけることで乗り越えようとするのがヤンキー的思考で、2次元に撤退するのがオタク的。それに対してサブカル系は様々なサブカルチャーを吸収してその自意識をこじらせていくわけですが、それはたんに決断ができないだけとも言えるわけで、その姿は客観的に見るとかなり「イタい」。
 そして主人公の藤本はそのサブカル系の「イタさ」の戯画みたいなもんであって、サブカルどっぷりの人には自分の「イタさ」を見させられるような感じもある。
 ただ、もともと自虐的な人が多いサブカル系の人はそんな「自虐」を見て、やっぱり笑ってしまうんだろうなっても思う。


モテキ的音楽のススメ 映画盤
オムニバス
B005CS6H2K