2011年の映画

 今年は震災の影響で『ヒアアフター』を見逃して以来、全然映画を見れなかった感じで、見ようと決めていた『わたしを離さないで』も見れなかったし、ベストをあげられるほど本数は見れていない状態。
 けど、例年選んでいるので強引にでも5本選んでみました。


1位 『モテキ

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 映画ファン失格という感じの1位ですが、単純に一番楽しめたのはこの映画かなと。
 90年代のサブカルを知らないと笑えないだろうし、また「自虐的なサブカル信者が自分のダメさを笑いつつ、それを笑える自分に健全さを見出す」みたいな不健全な部分が魅力の中心のような気もするんだけど、橘いずみの"失格”が流れたときには「キター!」って感じだったし、大江千里の"格好悪いふられ方"とか、TM NETWORKの"SELF CONTROL"とか、サブカルの王道というべきくるりの"東京"がやっぱり「ここぞ」ってとこで流れたり、ラストが"今夜はブギー・バック"だったり、とにかくサブカル系のツボをつきまくる演出に笑いが止まりませんでした。



2位 『ミッション:8ミニッツ』
 過去に何度もタイムスリップして同じ時間を繰り返すという設定で、『バタフライ・エフェクト』とか『時をかける少女』に通じるものがある映画ですが、ミステリーとして非常によくできているし、緊迫感のもたせ方もうまい。
 ジェイク・ギレンホール演じる主人公は何度も送り込まれる8分間の時間の中で、爆弾とテロリストを見つけなければならないのですが、観客は主人公とともに、まったく何もわからない状況から列車の様子、このミッションの内容、主人公の境遇といったものを知っていくことになります。脚本も撮影もよく考えられている映画だと思いました。



3位 『ブラック・スワン

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 今年一番映画としての完成度、そしてパワーを感じさせたのはこの映画。
 非常によくできたサイコ・ホラーであると同時に、バレエにおける肉体の酷使、そして肉体の「痛み」といったものを「これでもか」と思うほど表現してて息つく暇もありません。ナタリー・ポートマン演じるバレリーナのニナが、大役に抜擢されたことからのプレッシャーや周囲からの反感などで次第に精神のバランスを崩していくって映画で、今敏の『パーフェクトブルー』とちょっと似ています。ただ、幻覚のインフレをうまくコントロールしている点で、この『ブラック・スワン』の監督のダーレン・アロノフスキーのほうがうまいと思います
 けど、「もう一度見たいか?」と訊かれれば「もうお腹いっぱいです」という感じの映画でもある。



4位 『ソーシャル・ネットワーク

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 よくできた脚本と相まって、ものすごい情報量を2時間に圧縮しつつ、グイグイ引っ張る映画。成功によって何かを見失った男が仲間を失い孤独になるって映画はよくあって、この映画も良く似たストーリー展開を持った映画だけど、違うところは最初っから主人公が何かを失った男だというところ。ガールフレンド相手にKYな発言を連発して振られるザッカーバーグ。そこから特に反省するでもなく、ある意味でKYな的な態度を突き詰めていってそのまま成功してしまうのが、この映画とギーク的とも言える文化の特徴。
 映像はフィンチャーにしてはオーソドックスですし、何か飛び抜けたアイディアのようなものもありません。ただ、オーソドックスなサクセスストーリーから微妙にずれたところを、非常にうまくまとめ、あるいは誇張している感じです。



5位 『ツリー・オブ・ライフ

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 おそらくワーストにあげる人も多いであろう映画。僕も恐竜のCGはないと思います…。
 「世俗」に生きる父と「恩寵」に生きる母、そしてその子ども。ブラッド・ピット演じる父親は、長男のジャックに対して「成功のためには意思を強く持ち、時には悪人になることも必要だ」と述べる世俗的な人間です。そんな父親に反発するジャック。母親のような穏やかな生活もできず、弟を痛い目に合わせてみたり悪さをしてみたり、反抗期を迎えたジャックの様子が、大人になったジャックの中にある記憶を再現するように語られます。この部分の描き方や映像は素晴らしく、まさにテレンス・マリックならではのもの。ここだけなら、おそらくこの映画は万人に開かれた「いい映画」になったでしょう。
 ところが、映画の冒頭で恩寵の道に生きる母親の性質を最もよく受け継いだ次男が死に、その死に母親は「どうして我が子が死ななければならなかったのか?」と神に問いかけます。テレンス・マリックはこの家族の話に、旧約聖書ヨブ記の「神の創造の計画は人間の理解を超えている」というテーマを重ね、さらにこの地上における神の「奇跡」を映して見せます。けど、やっぱ恐竜のCGはないよな…。
 それでも家族を描いた部分の出来はすばらしいですし、またブラッド・ピットも全然かっこよくないんだけど非常にいい演技を見せています。


 去年と全く同じ事を書きますが、とりあえず、来年はもっと映画を見ねば…。