『ドラゴン・タトゥーの女』

 ようやく見てきました。新宿のミラノ座3で見てきたけどお客さんはけっこういた。
 まず、オープニングがいかにもフィンチャーっぽくてかっこいい。オープニングもそうですけど全体的に音楽の使いかたが上手い映画ですね。
 あらすじは原作『ミレニアム』のWikipediaのページから借りてくるとこんな感じ。

実業家・ヴェンネルストレムの不正を報道した、雑誌『ミレニアム』の発行責任者のミカエル・ブルムクヴィスト。だが、名誉毀損の有罪判決を下され、『ミレニアム』から離れることを決める。それでもミカエルは、ヴェンネルストレムの違法行為を確信していた。
時を同じくして、大企業グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルが、弁護士フルーデを通じて、ミカエルの身元調査を依頼していた。調査を担当したのは、背中にドラゴンのタトゥーを入れた、少年と見紛うような小柄な女性、リスベット・サランデル。
リスベットの調査から、ミカエルを信用に足る人物だと判断したヘンリックは、ミカエルにある仕事を依頼する。それは、36年前に一族が住む島から忽然と姿を消した少女ハリエット・ヴァンゲルの失踪事件の調査だった。ヘンリックは36年経った今も尚この事件に頭を悩まされ続け、一族の誰かがハリエットを殺したのだと信じきっていた。法外な報酬と、事件の謎を解決すれば、ヴェンネルストレムを破滅させることもできる証拠を与えるという条件から、ミカエルは、この如何にも難解そうな依頼を引き受ける。
調査は予想通り難解を極めるが、36年の時を経て、ミカエルは新しい手がかりを発見する。助手が必要となったミカエルにフルーデが紹介したのは、あのリスベットだった。やがて明らかになったのは、恐るべき連続殺人の真相とヴァンゲル家の繋がり、そしてハリエット失踪事件の顛末だった。


 最初はミカエルの追う本筋とも言うべき「ハリエット失踪事件」と、リスベットの話が入り交じるのでやや物語に入りづらい感じがしますが、ミカエルとリスベットがタッグを組むようになってから物語は一気に加速します。
 そしてストーリーはだんだんと同じフィンチャー監督の『セブン』のようになり、『セブン』+『ハンニバル』のような展開になっていきます。
 そういった意味で、この物語は90年代後半に流行ったサイコミステリーの集大成のような映画なのですが、そんな中でこの物語の特徴はリスベットの存在。
 

 原作の第一部の原題は「女を憎む男」。
 実はこのシリーズのテーマは「女性に対する暴力とそれに対する復讐」といったもののようで、原作シリーズは未読なのですが、これが三部作を貫いているみたいです。
 そしてシリーズを通してメインの存在はミカエルではなくリスベットのようで、だからハリエット失踪事件が解決した後も、暫く映画が続くのでしょうね。


 ただ、この映画は面白いのですが、「女を憎む男」があまりにもわかりやすい変態であることが欠点のような気もします。
 これは原作のせいなのか映画の脚本のせいなのかはわかりませんが、出てくる悪い男たちがあまりにもわかりやすい下司で、レクター博士とかに通じる魅力みたいなものは皆無ですね。
 別に犯罪者を魅力的に描く必要はないかもしれませんが、やや「浅く」感じてしまいます。
 また、フィンチャーも上手いのですが、『ゾディアック』より後の作品はけっこう普通なんですよね。映像面でどうしても「フィンチャー節」みたいなものを期待してしまうのですが、そういったものはなかったと思います。
 でも、かなりの要素が詰まったストーリーを2時間半にまとめてダレさせないのはさすが。娯楽作品として必要なものはきちんと揃っている映画です。


ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スティーグ・ラーソン ヘレンハルメ 美穂
4151792511


ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スティーグ・ラーソン ヘレンハルメ 美穂
415179252X