一応、ミステリの形式をとっていたTVシリーズが、スペシャル版の「SPEC~翔~」ではSPECホルダーのゲームバトルのようになり、そして迎えた劇場版。
「SPEC~翔~」のゲームバトルに、さらにあまりの恐ろしい内容にローマ法王によって封印されたというファティマ預言書といった中二病的な設定が追加され、日本を影で操る人間たちによる「御前会議」、そこがからんだ「シンプルプラン」なる謎の計画もでてきたのが『劇場版 SPEC〜天〜』。
なんだかエヴァンゲリオンのゼーレだとか人類補完計画とかを思い出します。
が、そんな話にまでスケールアップしたにも関わらず、キャラとパロディをこれまでもかと前面に出してくる演出は変わらず。相変わらずTVシリーズと変わらない面白さを保って、さらにエスカレートしています。
今回、何といっても一番面白かったのは栗山千明。
加瀬亮演じる瀬文とアメリカで一緒でかつては付き合っていたという設定の日本人なんだかアメリカ人なんだかよくわからない設定の人物なのですが、英語の発音がはいる変な日本語をしゃべる役に栗山千明が大ハマリ。
途中で「キル・ビル!」と呼びかけられるシーンもありますし、『キル・ビル』での”ゴーゴー夕張”の奇妙な日本人イメージを逆にパロった感じでとにかく笑えます。登場シーンもタランティーノの『レザボア・ドッグス』のパロディですしね。
この他にも何故か本名で登場する伊藤淳史とか、人生に終わりが見えたバブル引きずりキャラとして登場する浅野ゆう子など、他のキャラもなにがしかのパロディ。
さらに「私フジテレビしか見ませんの」という劇中のセリフとか、とにかくクスリとさせられるものが多いです。
ただ、こういったものを面白いと感じられるコンテキストを共有していないとまったく面白さのわからない映画でしょうね。
そういった意味で、この映画は既存のテレビドラマやテレビ文化の二次創作のようなものだとも言えます。
もともと、TVシリーズの「SPEC」自体が「ケイゾク」のパロディみたいなところがありましたし、両方に出ている竜雷太は「太陽に吠えろ!」のパロディといったように、シリーズ全体がとにかくパロディの積み重ねによって成り立っている作品でした。
ですから中身がないといえば中身がないのですが、そんな中でオリジナルなの強度を持っているのが、当麻と瀬文のキャラ。
特に加瀬亮の瀬文のキャラとそれを成立させる加瀬亮の演技力が、しだいにホラ話になっていくこのストーリーをかろうじてまとめているのだと思います。
まあ、ドラマを見ていない人は見ないほうがいい映画だと思いますが、ドラマが好きな人は楽しめる映画だと思います。
(ドラマのシリーズを全部見なくても楽しめるとは思いますが、少なくとも「SPEC~翔~」は見ておかないと、当麻のSPECとかややわかりにくい部分があると思います。)