秋のリリースラッシュで個人的に一番気に入ったのがこれ。
ネブラスカ出身の5人組で、メンバーの中にタップダンサーがいるちょっと変わったバンドで、ブライト・アイズことコナー・オバーストが運営するレーベルTeam Loveから2004年にデビュー。
学園祭のノリのような楽しくて無邪気な音楽を聴かせてくれるバンドで、2007年のサマソニでもダサくて素人っぽかったけど楽しいステージを見せてくれたものでした。
ところが、1stの「Wild Like Children」、2ndの「Bottoms Of Barrels」と良かったものの、初期衝動のパワーが薄れた感のあった3rdの「O」で失速。冒頭の"Tall Tall Grass"を除いては正直イマイチのアルバムでした。
その後、消えていたので解散しちゃったのか?と思ったら、久々に4thアルバムをリリースしてきて、ジャケットがこれ。
病んでます。
そして当然のように中身も病んでる。全体的に音は歪んでいるし、1stや2ndのころの無邪気な感じはどこにもありません。
けど、ポップ。病んでるけどポップなんです。
エモバンドが病んで「Radiohead化する」というのはよくあるパターンで、だいたい面白くなくなるケースがほとんどなんだけど、このTilly & The Wallはその「Radiohead化」とは別のかたちで病んでる。
「Radiohead化」の場合、世界に対する厭世観みたいのが全面に出て、感情は抜かれるけど、時にヒステリックみたいな定型があって、つまらないナルシシズムみたいになるケースが多いんだけど、このTilly & The Wallは「病んだ人のパーティー」といった趣で、感情はほとばしっているし、ナルシシズムのように内にこもらず外にパワーが発散している。
まあ、こんなふうに言ってもわかりにくいと思うので、とりあえず視聴をと思い、このアルバムの中で個人的に一番好きな"Thicker Than Thieves"を…と思ったのですが、YouTubeにないのでアルバムのタイトルにもなっている2曲めの"Heavy Mood"を。
相変わらずタップダンスによるリズムの面白さってのはあるし、大人数バンドならではのコーラスの厚みとかもあるんだけど、全体のトーンはまったく変わってしまっている。けど、多くの大人数バンドですぐに失われてしまい、実際、Tilly & The Wallの3rdでも失われていたバンドの「勢い」が復活しているんですよね。
メロディのセンスも相変わらずいいですし、アルバム全体も一気に聴ける内容になっています。最後にラストを飾る"Defenders"の音源を貼っておきますが、今年聴いた中でも屈指のアルバム。
多くの人が忘れているであろうバンド、Tilly & The Wallの復活です!
Heavy Mood
Tilly & The Wall