R・A・ラファティ『第四の館』

 国書刊行会未来の文学>シリーズの最新刊、ラファティ『第四の館』がようやく登場。出る出るって言ってからが長かったですね。
 で、肝心の中身の方は、ラファティらしくかなり変わった小説で、「超人類への進化」というSFの王道的なテーマの作品でありながら全然SFっぽくないものに仕上がっています。
 

 主人公のフレディ・フォーリーは新聞記者。ふとしたことから500年前に生きていたカー・イブン・モッドという人物と、国務長官特別補佐のカーモディー・オーヴァーラークという現代の人物が同一人物ではないかと疑い始め、その正体を探ろうとします。
 一方、ジム・バウアーら7人の収穫者(ハーヴェスター)は、「脳波網」という精神的な結界みたいなものをつくって世界の様々な人物に影響を与えたりしています。
 これだけ聞くと「歴史をまたいだ超人類の陰謀!」とか「超能力者同士の壮絶な対決!」とか、そういう話にもなってきそうなものですが、そういう緊迫感は特に無いままヘロヘロとした感じで話は進みます(「超能力者同士の対決」は一応あるんですけど)。
 また、ラファティというと「壮大な法螺話」が特徴なんですけど、この小説は前半はそういうものと見せかけておいて、だんだん「真面目なオカルト」の顔を見せてきます。


 訳者の柳下毅一郎の解説によると、この小説の下敷きにはアラビの聖テレサというカトリック神秘主義者の話があるとのことです。聖テレサは神との合一を経験したらしいのですが、彼女はその神秘体験を7つの段階に分け、その「第四の住まい」が神秘体験への入口だと語ったそうです。 
 この小説のタイトル「第四の館」はそこからきているもので、神への入口をめぐって蛇、ヒキガエルアナグマ、鷹の象徴を持つそれぞれの種族が戦うことになります。
 

 ただ、この小説を読んでいまいち落ち着かないのが、ラファティがこうした「オカルト的な陰謀」にどういうスタンスを取っているのかがわかりにくい点。
 ピンチョンだったら、こういう「オカルト的な陰謀」は小説を駆動するための仕掛けであるとともに現代のパラノイア的な状況を浮かび上がらせるための道具であったりするんですけど、ラファティの場合、単純な仕掛けや道具として扱っているとは思えない。
 かといって、「オカルト的な陰謀」に最初っから最後までまじめに付き合っているわけでもなく、ネタなのかマジなのかよくわからないところがります(「ネタっぽいけどマジかもよ」といったあたりなのかもしれませんけど)。
 

 というわけで、個人的にはいまいちノリきれないところもありました。もうちょっとオカルト的な素養があったらもっと楽しめるような気もするんですけどね。


第四の館 (未来の文学)
R・A・ラファティ 柳下毅一郎
4336053227