Kanye West/Yeezus

 前作、「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」でヒップホップともR&Bとも言えない圧巻の世界を構築したKanye West
 今作では、ラップに回帰していて、ここ最近の「808s & Heartbreak」→「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」の路線とは一線を画しています。Daft Punkなどがプロデューサーとして加わっていて、「Graduation」の路線がそのまま進化した感じでしょうか。
 また、エグゼクティブ・プロデューサーはリック・ルービン。少し音がロックっぽいところもあって、このへんがロックのプロデューサーとしても活躍したリック・ルービンの影響なのかな、とも思います。


 また、"Black Skinhead"、"New Slaves"、"Blood On The Leaves"など、カニエの初期の作品にあった黒人差別への怒りなどを思わせるタイトルの曲も多く、楽曲と相まってかなりヘヴィーな印象を与えます。
 個人的には、ややヘヴィーさが全面に出過ぎている気もするのですが、"Blood On The Leaves"はヘヴィーさと繊細さが絶妙にブレンドされたすごい曲ですね。
 有機的なR&Bに覆いかぶさるような攻撃的なホーン(電子音でつくられたものですが)とカニエのラップ。「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」で見せてくれたヒップホップともR&Bとも言い難いカニエならではの世界が広がっています。

 
 他にも"New Slaves"、"Guilt Trip"、"Send It Up"あたりも、有機的な曲をやや硬質な電子音で加工した感じがあります。ヘヴィーで攻撃的な音楽の中に垣間見える黒人音楽の情感といったものが、このアルバムの一つの聞き所だと思います。
 ただ、最初に書いたように基本的にラップに回帰しているので、前作、前々作のようなカニエならではのメロディ感覚のようなものはそれほど味わえません。これは好みが分かれるところでしょうが。個人的には「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」のほうが好きですね。
 もちろん、それでも「さすがカニエ」と思わせる出来ではあります。

* ちなみにジャケは写真の通り非常にシンプル。歌詞カードも何もないですし、シールは剥がしにくいですし、そこはいまいちかもしれません。 



Yeezus
Kanye West
B00CV5ZPA2