ふくろうずを推し続けて4年位なんですが、全然ブレークする感じがないですね。
去年あたりにアルバムかと思ったらミニアルバムでしたし、今回もDVD付きの初回限定盤が中心の展開で、完全に数少ないファンしか当てにしていないような売り出し方(だから、日本の音楽業界はダメになっていってるんだと思う)。
けど、ようやく出た2ndフルアルバム。いっつも「いい!」と言い続けてますけど、今作も「いい!」ですよ。
ただ、この良さが伝わらにから売れてないんですよね。
デビュー当時から、「相対性理論につづく」的なイメージで売られていて、そういう要素が皆無というわけではないんですが(今作も冒頭の"GINGA GO"を聴けばそういう感想を持つと思う)、本質的な良さはぜんぜん違うところにあると思います。
ふくろうずの良さはボーカルの内田万里の「演劇的なエモさ」みたいな部分と、それとがっちりハマっているメロディやアレンジで、相対性理論みたいな「おしゃれ」な感じとは全然違います。
フェイクとしての「エモさ」という点では椎名林檎とちょっと通じる部分があると思うんですけど、椎名林檎が先鋭的なサウンドでアングラ的な空間を完璧に構成しているのいたいして、ふくろうずの音がつくり出す空間はぜんぜんしょぼいし、ペラペラ。でも、だからこそ、そこにリアルが宿るということがあるのだと思います。
今回のアルバムで個人的に"マジックモーメント”だったのが、4曲目の"ユアソング"の次の部分。
君は 本当の心隠してさ
生きていけるというの そんなのは嘘だ
ありふれた歌詞といえばそうなのですが、ここの「嘘だ」の落とし方が最高。
別に力強さがあるわけでも情感たっぷりなわけでもないんですが、なぜか心に来るものがある。
そして、7曲目の"マーベラス!"がアルバムの中で一番アッパーな曲なんですが、これもペラペラ。
内田万里の声は高くなるにしたがってロリ声になっていくという特徴があるんですが、高音で速いペースのこの"マーベラス!"は、その声質も相まってペラペラに盛り上がります。で、そのペラペラ感が良い。
後半は、"37.3"、"ベッドタウン"、"赤い糸"といい曲がつづきますし、内田万里のエモさというのも生きていると思います。
特に"赤い糸"。サビに入る部分とそれと同じメロディを使っている大サビの入りの歌詞はそれぞれ次のようになっています。
骨が軋むくらい抱きしめて欲しい
恥ずかしいくらい好きと囁いて
スッテプバイステップで気楽に行こうぜ
「恥ずかしいくらい好きと囁いて」というフレーズも好きですけど、かなりドラマチックなラブソングのようで、「スッテプバイステップで気楽に行こうぜ」という脱力するフレーズを使ってくる所も、また絶妙だと思います。
椎名林檎だったら最後までドラマチックに演じてみせるところでしょうが(そしてフェイクのはずなのに本物ように思えてくる)、ふくろうずは最後までドラマチックにはいかずに、どこかで恥ずかしさが滲み出る。それが万人にとっていいのか悪いのかはわからないけど、個人的には好きですし、いいと思います。
ふくろうず 『マーベラス!(Short ver.)』
ふくろうず 『37.3(Short ver.)』
マジックモーメント
ふくろうず