『インターステラー』

 「ノーラン版『2001年宇宙の旅』!」みたいな前評判をさんざん聞いていたので、グレッグ・イーガン的な世界観(宇宙観)で撮られた『2001年宇宙の旅』のようなスタイリッシュな作品を想像していましたけど、思ったよりもヒューマンドラマで、そのヒューマンドラマが良く出来てた!
 
 冒頭のドローンを追いかけるシーンなどは、音楽とシーンの美しさが見事に融合していて、それこそ『2001年宇宙の旅』を期待させるのですけど、途中からは家族ドラマは全面に出てきて、それがまた泣かせる。壮大な相対性理論の世界と親子の絆がシンクロする構成は、いわゆる日本のマンガやアニメに見られる「セカイ系」を思いおこさせるものですけど、漠然とした「切なさ」や「泣き」を中心に持ってくる「セカイ系」とは違って、ディテールをしっかりとさせつつ、老若男女が感動できる家族ドラマに持ってくるところがお見事だと思います。


 以下、ややネタバレあり。


 この映画、元ネタをあげようと思えばいくらでも上がると思います。
 僕が思いつくだけでも、まずは『2001年宇宙の旅』(音楽、人工知能など)、『ライトスタッフ』(主人公)、『オーロラの彼方へ』(時空を超えた家族の絆)、『コンタクト』(謎の存在からのメッセージ、ただ舞台となる農場とかからしてひょっとしてシャマランの『サイン』の影響が大きいのか…?)、『ほしのこえ』(コミュニケーションのズレ)、『トップをねらえ!』(ウラシマ効果)などです。
 

 農作物に病気が蔓延し食料不足や砂嵐に悩まされるようになった近未来。そこでは、人類の月面着陸も捏造だということにされ、科学への夢は捨て去られていた。
 主人公は墜落を経験しそれがトラウマになっている元・宇宙飛行士。農夫になっていた彼は娘とともに不思議なメッセージを受け取り、密かに宇宙の研究を続けていたNASAにたどり着く。そこで人類の移住計画を知り、その操縦士の任務を依頼された彼は、娘や家族を捨て、子どもたちのために土星近くのワームホールを通って別の宇宙への旅に出る。


 まあ、こんなストーリーなんですけど、ストーリーを聞いただけではそれほど面白そうに思えないかもしれません。「俗っぽい話だな」と思う人も多いと思います。
 しかし、この「俗っぽい話」がとても良く出来ている。クリストファー・ノーランの新たな才能を見た感じです。3時間近い長い映画ですが、その「俗っぽい話」をスタイリッシュに見せていきます。
 ちなみにこの映画に関しては当初スピルバーグが撮る予定だったらしいのですが、スピルバーグならもっと「俗っぽい話」になったような気がしますね。


 あと、マイナーで地味ですが、途中であげた『オーロラの彼方へ』は良い映画です。


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