『ゴーン・ガール』

 デヴィッド・フィンチャーの新作。失踪した妻エイミー(ロザムンド・パイク)を、その夫のニック(ベン・アフレック)が追う、という映画のような形で始まり、そこから夫婦それぞれの知られざる顔が明らかになり、二転三転。
 エイミーは母が出版したベストセラー絵本『完璧(Amazing)なエイミー』のモデルで、そのことを嫌っており、「完璧なエイミーは私の一歩先を行くの」と話していました。
 そんなエイミーと結婚するニックも出会った時はいわゆるイケている男。他人に羨ましがられるカップルによる理想の結婚でした。ところが…というストーリーになります。
 いかにもフィンチャー的な映画ですが、最後のどんでん返しだけではなく、途中でも大きな切り返しがあるのがこの映画の特徴です。
 以下、ネタバレ含みます。
 

 この映画を見始めて、まず思い出したのは『フリーダムランド』。サミュエル・L・ジャクソンジュリアン・ムーアが出演した割にはたいして話題にもならずに出来もいまいちだった映画です(むしろ原作小説のほうが評判が高いと思う)。
 『フリーダムランド』では、黒人に子どもを誘拐されたと白人の母親が警察に訴え、そこから行方不明の子どもを探す大々的な活動が始まります。アメリカでは行方不明者を捜索する民間の団体があり、そこが仕切り、広報を行う形で組織的に捜索活動が行われていきます。
 このシステマティックな捜索活動がかえって怖く、その過程で事件が母親のでっち上げで、子どもを殺したのが母親だったというのが『フリーダムランド』のストーリーです。


 この『ゴーン・ガール』でも、まさにそうした光景が繰り広げられます。
 そしてその中で夫婦の関係がうまくいってなかったこと、夫の不倫などが明らかになり、容疑は次第に夫のニックに向けられていくわけです。
 ただ、当然これで終わりではないわけで、ここから妻殺しの容疑をかけれた夫を専門に弁護する弁護士ボルトなどが登場し、マスコミを使ったイメージづくり合戦がはじまります。
 このあたりから映画は単純なミステリーではなくなり、むしろブラックコメディのような様相も帯びてきます。特にアメリカのニュースショーとそのキャスターの描き方は秀逸ですね。
 

 また、エイミーは途中までは「完璧(Amazing)なエイミー」なのですが、つまらないミスからその完璧な計画は一度破綻します。
 しかし、そこからもう一度「完璧なストーリー」を組み上げる。そこがこの映画の魅力であり、怖いところです。


 ちなみに間違いなく面白かったですけど、フィンチャーの作品は見ていて「長い」と感じることが多いです(面白いけど時間を忘れさせるような没入感のようなものがない。『ゾディアック』もそうだった)。『ゴーン・ガール』も2時間半ですが3時間の『インターステラー』並に長く感じました。
 ちょっとダラっとするけれども、終わってみれば面白い。ラストの「これが結婚よ」の台詞も含めて、ここでも指摘されていますが、ちょっとキューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』を思い出しました。


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