『6才のボクが、大人になるまで。』

 見ようと思いつつ見逃していたんですけど、近所でまだやっていたので遅ればせながら見てきました。
 男の子が6才から18才になるまでの12年間を追った話ということで、もっとドキュメンタリーのようなものを想像していました、子どもだけではなく長い時間の中での親の変化も描いたいい映画でした。


 核となる登場人物は、主人公で6歳から18歳まで成長するメイソンJr、姉の2歳か3歳上のサマンサ、母親のオリヴィア、そしてイーサン・ホーク演じる父親のメイソン・シニアの一家です。
 しかし、一家とは言っても映画の冒頭で、ミュージシャンを夢見て父親としての自覚に欠ける父と、子どもに対する責任を説く母親が衝突。父母は離婚してしまいます。
 そこから、母親のオリヴィアは自活するために大学で勉強し、そこで子持ちの教授と再婚し、しかし、そこでの暴力から再び離婚というように懸命に「漂流」します。
 一方、定職にもつかずにフラフラと「漂流」していた父親は、週末や節目の時だけ子供たちと関わりながら、やがて恋人を作って結婚し、「安定」していきます。
 

 子どもたちの様子や、その成長とともに描かれるiMacハリーポッターオバマ旋風といった風俗の描写も面白いのですが、個人的に一番面白かったのが、この両親の関係と変化。
 最後の方に、父親のメイソン・シニアが「俺もすっかりお母さんが望んだ腑抜けな男になった。今の自分ならうまくやれた」というようなことを言うシーンがあるのですが、この壮大な遠回りをした上で二人の足並みが揃う展開は胸に来るものがありますね。


 また、心理学を専攻し、大学で教えるまでになったオリヴィアだけど、ある意味その道の専門家であっても子どもたちは自分の思うようには育っていかない。一方、たまたま家の水道の修理に来ていたヒスパニック系(?)の青年に「あなたは頭がいいんだから学校に行って勉強しなさいよ」と声をかけると、それが青年の運命を変えて感謝されることになる。
 子どもにとって親の影響力には圧倒的なものがあるわけだけど、それでも、というか当たり前のように子どもは思ったようには育たない。けれども、一回の出会いや相手に対する一言が、その人の運命を大きく変えることもある。これは子育てとか教育というものを考えさせるいいシーンでした。


 主人公の子どもの描き方についてはやや陳腐さも感じましたが、それを補ってあまりある親のドラマ。まあ、そんなふうに感じるのは自分が親になったからなのかもしれません。


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