「若冲と蕪村」展

 時間ができたのでサントリー美術館まで見に行ってきました。
 ともに生誕300年、同い年の画家を特集した展示です。一昔前なら、「蕪村と若冲」なんでしょうが、ここ最近の若冲ブームの影響で「若冲と蕪村」になってます。
 若冲は相変わらずの巧さと画面から漂う緊迫感あってさすが。特に「双鶴・神亀図」の亀の甲羅の超絶技巧とかにはしびれました。
 と、思えば、涅槃図を野菜に置き換えて描いてみせた作品とか「寒山拾得図」のようなユーモアもあって楽しめます。


 一方の蕪村も、想像以上にいろいろなスタイルの絵を描いていた。
 例えば、「天橋立図」と聞くと誰しもが雪舟のすごい書き込みの絵を思い浮かばるのですが、蕪村の「天橋立図」は人を喰ったようなあっさりさ。と、思えば、「晩秋飛鴉図屏風」のような構図で動きを感じさせる画もありますし、「風虎図屏風」や「鳶・鴉図」では風の動きをよく捉えていますし、「山水図屏風」のような本格派もあり。やはり評価されてきただけありますね。
 また、「維摩・龍・虎図」の龍のたたずまいとかも面白かったですし、「子犬図襖」(犬好きは是非)も可愛らしかったです。
 ただ、蕪村の代表作は実はこれから登場らしく、国宝・「夜色桜台図」は4月29日から、「富嶽列松図」も4月15日からの登場らしいので、蕪村を見たい人はこれからのほうがいいかもしれません。


 で、この展覧会が提示する一つの謎は同い年の画家なのにまったく交流が伺えないのはなぜか?ということなんですけど、個人的に今回の展示を見て思ったのは、俳人でもあった蕪村にとって、すべての対象にピントがあっているような若冲の絵は自分の感覚とは合わないものだったんじゃないかということ。
 若冲の鶏の絵を見たことがある人はご存知だと思いますし、今回の展示の「猿猴摘桃図」なんかは顕著なんですが、すべてが等しく描き込んであって、何か一つのものにすべてを象徴させるような俳句の考えとは明らかに違うものだと思います。
 けれども、俳句も蕪村流の絵も何かに対する集中力がないと、止めどなく安易な方に流れていくんだろうなと、そんなことを考えさせられた展覧会でした。


聚美 vol.14 (2015 WINTER) 特集:若冲と蕪村
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