事前の予想を覆してみごとアカデミー作品賞を撮った映画。2003年にピューリッツァー賞を受賞した『ボストン・グローブ』紙の調査報道班「スポットライト」チームによる、ボストンとその周辺地域で蔓延していたカトリックの神父による子どもへの性的虐待事件に関するスクープを描いています。
スクープというと誰も知らなかった事実を暴くといったイメージがありますが、カトリックの神父による子どもへの性的虐待事件はまったく知られていなかったわけではありませんでした。しかし、それらの事件をつなぎあわせ、そこに教会による隠蔽や教会の構造自体の問題があることを暴いたのがこの「スポットライト」チームのスクープでした。
例えば、ある車種の車が何件か事故を起こしていたことだけが知られている中、そこに設計上のミスとそれを知りながら隠蔽を測った自動車メーカーの動きを暴いたといった感じでしょうか。
とにかく調査報道とはいかなるもので、いかに価値があり、そしてそれを成し遂げるには記者という人間の力が必要であるということを描いた映画になっており、それがしっかりとした脚本としっかりとした役者の演技を通じて見るものにわかるようになっています。
「スポットライト」チームを演じた、マイケル・キートン、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムス、ブライアン・ダーシー・ジェームズは全員良かったと思います。特にレイチェル・マクアダムスはいかにも正義感の強い女性新聞記者らしかったですね。
あと、マイケル・キートン。主演男優賞は取れなかったものの、去年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』に引き続きの作品賞受賞。乗りに乗っている感じですね。
また、このスクープを追うきっかけというのも面白いところです。
この話は『ボストン・グローブ』紙は親会社となったニューヨーク・タイムズ社から編集局長がやってくるところから始まります。バロンという名の新しい編集局長は、マイケル・キートン演じるロビーにコストカットの必要性を示唆したりして、出だしのイメージはあまりよくありません。
見ているものは、スピードや効率を重んじる新編集局長に「スポットライト」チームが地道な調査報道で意地を見せるのかな?とも思うのですが、実は神父による子どもへの性的虐待事件を追うべきだと訴えるのは新編集局長のバロンなのです。
ボストン生まれの者が何となく「見て見ぬふりをする」中で、この事件の重要性にいち早く気づくのはNYから来た新編集局長と、被害者の弁護をしているアルメニア系のよそ者弁護士です。
地元に密着する優秀な記者たちが、よそ者とのコラボレーションでスクープをつくりあげる。そこもこの映画の見所なのではないかと思います。