『君の名は。』

 新海誠のファンというわけではないけど、今日を逃すとしばらく見れないかもしれないので、初日の今日、見てきました。
 新海誠にとっては、実質的な「メジャーデビュー作」とも言える位置づけの作品で、お得意のセカイ系的な味付けを薄めてくるのかとも思ったけど、音楽に「セカイ系ロック」ともいうべきRADWIMPSを起用し、得意なフィールドで勝負してきた感じです。
 相変わらず風景描写は冴えてますし、『ほしのこえ』、『秒速5センチメートル』の要素を散りばめつつ、もっと開かれた作品に仕上がっていると言えるでしょう。


 Yahoo映画のページの載っているあらすじは以下の通り。

1,000年に1度のすい星来訪が、1か月後に迫る日本。山々に囲まれた田舎町に住む女子高生の三葉は、町長である父の選挙運動や、家系の神社の風習などに鬱屈(うっくつ)していた。それゆえに都会への憧れを強く持っていたが、ある日彼女は自分が都会に暮らしている少年になった夢を見る。夢では東京での生活を楽しみながらも、その不思議な感覚に困惑する三葉。一方、東京在住の男子高校生・瀧も自分が田舎町に生活する少女になった夢を見る。やがて、その奇妙な夢を通じて彼らは引き合うようになっていくが……。


 まず、この映画は大林宣彦の『転校生』などと同じ男女入れ替えものです。
 高校生くらいの男女入れ替えものというのは非常に笑いの取りやすい設定で、この映画の前半もコメディとしてよく出来ています。特に、中身が三葉の瀧を演じる神木隆之介のアフレコはうまくて、周囲がドキッとなるような「女の子っぽさ」を出しています。
 この「笑い」は今までの新海誠作品にあまりなかったことかもしれません。


 ただ、「君の名は。」というタイトルからもわかるように、この映画は「すれ違い」のドラマでもあります。
 『転校生』は幼なじみと入れ替わりましたが、この映画で入れ替わるのは見知らぬ他人で、片や山奥の町、方や東京の都心部に住んでおり、いろいろな意味で「遠い」存在です。
 『ほしのこえ』にしろ『秒速5センチメートル』にしろ、今までさんざん「すれ違い」を描いてきた新海誠だけあって、この「すれ違い」の描き方は上手いですし、ひねりも加わっています。


 そしてセカイ系に欠かせない「世界の危機」。さすがにメジャー作品となると『ほしのこえ』のような、まったく説明なしというのは許されないのでその描き方は難しかったと思うのですが、この映画では3.11の記憶をうまくつかないながら「世界の危機」をそれなりに説得力のある形で導入できています。もちろん、細かい突っ込みどころはあるかとは思いますが、瀧くんが毎回家のドアの鍵を閉めないことに比べれば気にならない。


 そしてラストは『秒速』的な雰囲気が強まり、「秒速なのか? 結局、秒速なのか? 山崎まさよしが流れるのか
!?」という感じなるのですが、メジャー作品らしく無難な着地。今までの新海誠要素を十分に散りばめつつ、より幅広い支持を得られる作品になっているのではないでしょうか。


新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド
新海 誠
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