2016年の映画

 今年は休みが土日から日月になったこともあって、会員なら平日1000円で見れる立川のシネマシティでけっこう映画を見ました。
 しかし、実を言うと夏休みに奥さんの実家近くのシネコンで見た「アイカツ」の映画を除けば、すべてシネマシティで見てるという手抜きな映画鑑賞ライフ。まあ、そんな人のランキングです。


1位 『キャロル』

B01G1OGH78キャロル [Blu-ray]
KADOKAWA / 角川書店 2016-08-26

by G-Tools


 とにかくテレーズ役のルーニー・マーラのかわいさが衝撃的。
 服装といい佇まいといい完璧で、キャロル(ケイト・ブランシェット)が「天から降ってきた」と形容する通りの存在。ケイト・ブランシェットもさすがの存在感で、この二人が揃ったということだけで「魅せる」映画になっていると思います。
 ファッションももう変化をやめて永遠に1950年代の服装でいいんじゃないかと思えてきます。
 「50年代の満たされない女性もの」というのと、『めぐりあう時間たち』(ジュリアン・ムーアのパート)や、同じくジュリアン・ムーアが出ている『エデンより彼方に』とか、レオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレットが共演した『レボリューショナリー・ロード』とか、けっこう好みの作品が多いのですが、この作品も時代背景を活かしつつテレーズとキャロルの微妙な関係性が存分に描かれている映画です。


2位 『シン・ゴジラ

B01NCLCRTZシン・ゴジラ Blu-ray2枚組
東宝 2017-03-22

by G-Tools


 映画の印象は、「岡本喜八『日本のいちばん長い日』+東日本大震災+『巨神兵東京に現わる』+ヤシマ作戦」。
 今まで見たことのないすごいものを見たという感じではないですけど、庵野秀明の今までの作品や、庵野秀明の好きなもの、そして何よりも日本人が東日本大震災で初めて目にすることになった映像が見事に再構成されている感じで全編を通して面白かったです。
 「今までに誰も見たことのない画」を見せつけたのが東日本大震災。平野に広がる津波の映像など、今までの想像力を打ち破るような映像がそこにはありました。その東日本大震災で目にした画や、政治家や官邸の動き、「決死」という言葉を感じさせた原子炉への放水作戦などのさまざまな要素を、ゴジラという戦後日本の生み出した代表的な存在を中心に再構成してみせた映画だったと思います。


3位 『リップヴァンウィンクルの花嫁』

B01H19MIQGリップヴァンウィンクルの花嫁 [Blu-ray]
ポニーキャニオン 2016-09-02

by G-Tools


 「長い」ですけど、深く印象に残った映画。
 前半は主人公の皆川七海(黒木華)の目を通して、「フェイク」に満ちた現代社会を経験していく展開。皆川七海は派遣の教師で、ネットで知り合った男性と結婚するも裏アカを知られ、さらに結婚式では親戚のサクラを手配。周囲にあるのは「フェイク」ばかりです。
 そして、この「フェイク」の世界で主人公をいろいろと手引するのが、綾野剛演じる安室行舛(あむろゆきます)。彼の造形と綾野剛の演技は傑作です。
 七海が結婚式のサクラのバイトで、里中真白(Cocco)と知り合ってからが後半。映画はリアリティのある世界を離れ、少しファンタジーっぽい展開を見せます。
 ところが、ファンタジーのように見えていた物語の中で、真白が急に資本主義の本質のようなことを語り始め、ラスト近くの黒木華綾野剛、りりィの3人による圧倒的なシーンへと流れこんでいきます。ここまでずっと、ある意味で資本主義を体現してきた綾野剛の変貌ぶりは見事です。
 今年、残念ながらりりィさんは亡くなってしまいましたが、このシーンの演技は本当に見事でした。


4位 『永い言い訳

4167906708永い言い訳 (文春文庫)
西川 美和
文藝春秋 2016-08-04

by G-Tools


 DVDはまだなんでリンク先は原作小説。
 突然のバス事故で美容師の妻(深津絵里)を失った、本木雅弘演じる作家の衣笠幸夫(ペンネームは津村啓)。突然の悲劇に襲われた彼であったが、実は夫婦の仲は冷えていて事故の当日も実は幸夫は不倫をしており、素直に泣くことは出来なかったというがこの映画の出発点。
 そんな幸夫は、幸夫とは真逆に妻の死をストレートに悲しみ嘆く大宮陽一(竹原ピストル)とその子どもたち(小6の兄と5歳の妹)と知り合い、ひょんなことから交流を重ねていきます、というのがこの映画のストーリーになります。
 前半は幸夫が子どもたちと擬似家族を形成し何かを取り戻していくという、ありがちなストーリーなのですが、そこから話をどんどん展開させていくのが監督に西川美和の腕ですね。
 「何かをすることは何かからの逃避である」、この厄介な真実の一面を掘り下げようとした映画になります。


5位 『君の名は。

4041026229小説 君の名は。 (角川文庫)
新海 誠
KADOKAWA/メディアファクトリー 2016-06-18

by G-Tools

 こちらもDVDはまだなのでリンク先は原作小説。
 男女入れ替えで笑いを取り、東日本大震災の記憶を使って「世界の危機」を演出し、新海誠必殺の風景描写と、RADWIMPSの曲でドラマを盛り上げる。エンターテイメントとしては文句のない映画だったと思います。
 特に尺(長さ)に対する禁欲的な姿勢は特筆すべきもので、これほど無駄のない邦画というのはあまりないのではないでしょうか?
 そしてラストは『秒速5センチメートル』的な雰囲気が強まり、「秒速なのか? 結局、秒速なのか? 山崎まさよしが流れるのか!?」という感じなるのですが、メジャー作品らしく無難な着地。もちろん、『秒速5センチメートル』が好きだという人もいるでしょうが、これは素直に成熟と受け取っていいと思います。



 その他だと、『この世界の片隅に』、『ストレイト・アウタ・コンプトン』ですかね。
 シネコン中心の鑑賞だとどうしても邦画が多くなってしまうのですが、その邦画が充実していた1年といえるのではないでしょうか。