2016年の紅白歌合戦を振り返る

 あけましておめでとうございます。
 まずは1年の儀式ともいうべき紅白の振り返りから。
 今回の紅白のテーマは「夢を歌おう」でしたが、見ている方からするとテーマは「SMAPの不在」以外の何物でもなかったですね。
 おそらく、ギリギリまでSMAPへの出演交渉を続けていて、そのために時間も10分以上は用意していたと思うんですけど、結局SMAPの出演がポシャって、その10分以上をどう埋めたのかというのがひたすら気になりました。
 後半の歌手はフルコーラスで歌うことが多かったので、まずはそこで埋めたのでしょうし、ピコ太郎×2回もそうなのかな?と。
 さらにタモリマツコ・デラックスの小芝居もそうだとは思うのですが、あの小芝居こそが今回の紅白の象徴であると言えるでしょう。
 視聴者は審査員席に登場するタモリとマツコを待ち続けるわけですが、2人は来ない。まさに、紅白のスタッフが待ち続けたSMAPと同じわけです。タモリとマツコが引いたパイプオルガンはSMAPへのレクイエムでしょうし、今回の紅白自体が「SMAP不在」という無を媒介にして構成された極めて否定神学的な構築物だと言わざるを得ません(詳しくは、発表未定の論文「否定神学としての第67回紅白歌合戦、あるいはSMAPとガッキー恋ダンスを待ちながら」で)
 あと、当然のように勝敗も「なんじゃこりゃ?」という感じで、どこに紅組の勝因があったのかはよくわからないですね。
 

 以下、各歌手の短評にいきますが、3歳と0歳児が起きていた第1部はあまりきちんと見れていなかったこともあって印象が薄く、第2部中心の短評になります。


欅坂46→ 「2人セゾン」のダンスもエモさ以降注目していましたが、「サイレントマジョリティー」もメロディーへの歌詞の乗せ方とかダンスは面白い。すごくファシズムっぽいですけどね。
三山ひろし→ 「ニャンちゅうワールド放送局」でもおなじみのズーマダンケとコラボしてけん玉をしたんですけど、けん玉に気が取られすぎて歌の印象がない…。
miwa→ 毎年言うけど歌はうまい。それだけだけど。
郷ひろみ→ 2015年の紅白で冷遇されまくった土屋太鳳と「まれ」。個人的には「土屋太鳳のリベンジの舞台!」というふうに見ていました。良かったと思います。
RADWIMPS→ 00年代以降出てきたバンドの中では、やはり野田洋次郎のボーカルは際立っているのだなという印象。言葉数の非常に多い歌詞ですが、それを生演奏でクリアーに伝えることができるのはなかなかないのでは?
乃木坂46→ 自分は乃木坂のメンバーが皆同じに見えて全然覚えられず、ずっと生駒ちゃんしか識別できなかったのですが、最近識別できるようになったのが橋本奈々未。が、今回卒業ということで、再び生駒ちゃんしかわからない時代に突入です。
島津亜矢→ 美空ひばりの「川の流れのように」をカヴァー。この歌はサビで裏声に行ってまた戻ってくる所が非常に難しく、天童よしみもここで苦労していましたが、島津亜矢はキーを下げることで裏にいかずに済ませるという作戦でした。一つの方法ではありますけど、やや姑息な感じ。冒頭の崩し方も評価できません。
桐谷健太→ 桐谷健太といえば、天皇賞(秋)での君が代の独唱なわけですが、今回の出だしもためすぎでしょ。
KinKi Kids→ デビュー当時はひょろひょろだった堂本光一の歌唱ですが、キャリア積んだこともあって上手いとはいえないけど力強さは出た。
星野源→ 前回は歌唱以外完璧という感じで、それが歌唱力のいまいちさにスポットライトを当ててしまった感じだったけど、今回はすべてにおいて勢いに乗っている感じで、歌唱力も気にならず。そして、国民の期待を一身に背負いつつ最後にちょっとだけ恋ダンスをしてみせた新垣結衣は、天然でかわいさを発揮できる人。
大竹しのぶ→ やはり2年前に美輪明宏が歌った歌なのでどうしても比較してしまいますよね…。
松田聖子→ ここ2年ほど、トリをやってガチガチに緊張してダメだった松田聖子ですが、今回はそこから開放されて例年よりも伸びやかに歌えたのでは。YOSHIKIの曲もあってた。
X JAPAN→ TOSHIの声はやや不調だった気がしますが、一方で「孤高の天才」みたいなイメージを売りつつ、一方で「ゴジラ対紅白」の茶番にきちんと付き合うYOSHIKIはいい人なのだと思った。
THE YELLOW MONKEY→ 「JAM」という中2病的な歌よりも(好きですけど)、「BURN」とか「球根」あたりが無難じゃないかと思ってましたが、その心配を吹き飛ばしてくれる吉井和哉の歌いっぷりだったのではないかと。
氷川きよし→ 今回のMVP。前回、「白雲の城」を歌った時も素晴らしかったのですが、今回も素晴らしかった!中継でこれだけよかったのは珍しいでしょう。氷川きよしにどれだけの歌を提供できるかで日本の演歌の未来は決まるんじゃないかと思ってます。
宇多田ヒカル→ おそらくNHKからは場所とかバックの演奏とかでいろいろなアイディアが出たと思うんですが、カラオケ+マイク一本というセットには「私はスタジオミュージシャンなんです」という宇多田ヒカルの決意のようなものがうかがえました。良かったと思います。
石川さゆり→ トリでしたけど全盛期よりはやや落ちたか。女性の演歌は石川さゆりとともに終わってしまうんでしょうか…?
嵐→ 良かったですけど、やはりSMAPの影がちらつく。本来ならばSMAPが大トリだったんでしょうね。


 勝敗の疑惑もありましたが、もうひとつの疑惑は「ふるさと」の歌唱において、有村架純はちゃんと歌っていたのか?という問題。
 マイクを持っている位置からして「音声さん拾わないで!」という状態で、「花は咲く」をちゃんと歌った綾瀬はるかを見習うべきだと思いました。