Mr.Children19枚目のアルバム。前作で小林武史のプロデュースから離れてバンドサウンドっぽさを取り戻したミスチルですが、今回の路線もそう。一時期鳴りを潜めていたロックっぽさも感じられます。
"海にて、心は裸になりたがる"とか"day by day (愛犬クルの物語)"とかは、久々のアップテンポなロックナンバーだと思います。
そして何よりもこのアルバムは「ミスチルっぽい」。
別にメロディが過去の楽曲とそっくりとかそういうわけではないのですが、コード進行なのか、アレンジなのか、コーラスの入れ方なのか、とにかく全編にわたって「ミスチル節」が鳴り響いています。
一方、歌詞は文字にしてみるとけっこう平板で、使われている言葉も特に詩的ではないです。
例えば、3曲目の"SINGLES"のサビはこんな感じです。
悲しいのは今だけ
何度もそう言い聞かせ
いつもと同じ感じの
日常を過ごしている
それぞれが思う幸せ
僕が僕であるため
oh I have to go
おそらく作詞の教室とかにこの歌詞を提出したら「こういうのは歌詞ではない」と言われるような感じですよね。「もっと比喩を使え」とか「こう直截的な言葉を並べるのではなく…」とか言われそうです。実際、以前の桜井和寿ならもうちょっと詩的に仕上げたような気もします。
でも、それでも良い歌に仕上げてくるところが今のミスチルがもつ「芸」なのかもしれません。歌詞に使われている言葉が詩的ではなくても、曲がつくときちんとした「歌」になっている感じです。
今のミスチルなら「日経新聞の1面から1曲作ってください」と言われてもこなしてしまうんじゃないでしょうか?
桜井和寿も、そろそろ自らの実存にもとづいた歌詞ばかりを書くのは難しい年齢になってきたのではないかと思いますが(48とか49歳?)、自分の実存からひねり出してきたような言葉ではなくても良い曲ができるようになったというのは大きいのではないでしょうか?
「[(an imitation) blood orange] 」のときは「ミスチルもそろそろ終わってしまうか…」と思ったのですが、これならまだしばらくはニューアルバムを楽しみにできそうですね。
Mr.Children「SINGLES」MV(Short ver.)