『シェイプ・オブ・ウォーター』

 今年のアカデミー賞受賞作ですが、立川では早くも夜のみの上映となってます。今日は「西郷どん」のレギュラー放送がないということで見に行ってきました。
 

 『シェイプ・オブ・ウォーター』の最初の感想は「これがアカデミー賞なのか」。これは別につまらないわけではなくて「アカデミー賞っぽくないな」というもの。
 会話をはじめ細かい小ネタは非常に面白いのですが、ファンタジーっぽい世界設定でありながら、1960年代の冷戦を背景としてスパイ映画の要素を混ぜてくる感じとか、虐げられてきたと思われる主人公イライザが映画の中で見せるものすごい積極性とか、ちょっとちぐはぐに思える部分もあります。
 また、美しいシーンもありますが、恋愛ドラマとしての盛り上がりもやや弱いと思います。


 ただし、登場人物たちがそれぞれ抱えている孤独というものがうまく描かれており、その孤独な者同士のふれあいがドラマを作っています。
 もちろん、メインとなるのは発声障害のある独身女性のイライザと南米から連れて来られた半魚人の愛なのですが、イライザの同居人でゲイのイラストレイターのジャイルズや、イライザの仕事の同僚で夫とのコミュニケーションが断絶している黒人女性のゼルダの存在がこのストーリーに広がりをもたせています。さらに半魚人の研究者であるホフステトラー博士もまた孤独な存在であり、見ていくとこうした孤独を設定するために1960年代前半という時代が選ばれているかな、とも思います。
 そして、ギレルモ・デル・トロだけあって半魚人の造形とか描き方は上手いです。初見は気持ち悪いけど、よくよく見ていくと何か高潔さを感じさせるように仕上がっています。


 けれども、やっぱりトータルで見るとドラマとしては何か足りないような気がするのも事実。ギレルモ・デル・トロに関しては、『パシフィック・リム』も同じように感じたので、やや合わないところがあるのかもしれません。