チャットモンチーのラストアルバムによせて

 チャットモンチーのラストアルバムの「誕生」のレビューを書くつもりだったのですが、あんまり個々の楽曲を語る気になれないので、今回のアルバムを聴いてチャットモンチーの解散について思ったことを少し書いておきます。 
 楽曲を語る気にはなれないと書きましたが、"たったさっきから3000年までの話"の橋本絵莉子のボーカルはいいですし、"the key"の♪好きな人ができる日は/未来のはじまり/未来のはじまりだよ 〜 嫌いな人ができる日は/あなたのはじまり/あなたのはじまりだよ♪という歌詞もいいですし、高橋久美子が作詞した"砂鉄”もいいと思います。


 ただ、このアルバムを聴いてチャットモンチーが解散することに何だか納得してしまったということです。
 今回は基本的に打ち込みが中心で、チャットモンチー・メカと称してライブなどを行った流れでつくられたアルバムになります。つまりバンド編成ではないわけです。
 

 デビューから順調にセールスを伸ばしたチャットモンチーは、プロデューサーのいしわたり淳治が過度に自分たちをコントロールしようとするのを嫌って、セルフプロデュースで「YOU MORE」をリリースします。インディーズバンドのデビュー盤のようなこのアルバムはチャットモンチーのバンドに対するこだわりを強く感じさせるアルバムでした。
 ところが、ここでバンド活動に一呼吸入れるかどうかでドラムの高橋久美子が脱退。バンド存続の危機となるわけですが、これを二人編成という荒業で乗り切り、「変身」というアルバムをリリースします。
 「YOU MORE」と「変身」は橋本絵莉子福岡晃子のバンドに対する執念が生み出したようなアルバムで、「生命力」や「告白」あたりに比べると完成度は劣るものの、ざらざらしたような魅力を持つアルバムでした。
 そして、サポートメンバーを迎えた「共鳴」で、再びバンドとしての安定感を取り戻し、再び走り始めるのかと思いました。それだけ「共鳴」の楽曲は良かったと思います。


 ところが、その編成で次のアルバムとはいかずに解散宣言。こうなると、やはり高橋久美子の穴は大きく、結局、脱退後は安定したバンドを組むことはできなかったのだと思ってしまいます。
 

 また、今回の「誕生」よりも去年リリースされた橋本絵莉子波多野裕文の「橋本絵莉子波多野裕文」のほうがいいんですよね。
 今回、「誕生」を聴いた後に、「誕生」より前にリリースされたシングル"majority blues"、"消えない星"、"Magical Fiction"もダウンロードして聴いてみましたけど、これらと比べても「橋本絵莉子波多野裕文」のほうがいいです。
 ここからも、橋本絵莉子にとって必ずしもバンドは必要なくなったのだな、と感じてしまいました。


 とはいっても、チャットモンチーの楽曲の良さと橋本絵莉子のボーカルの素晴らしさは消えないわけで、これからも聴き続けていくんだと思います。


誕生(初回生産限定盤)
チャットモンチー
B07C5GZH9X


橋本絵莉子波多野裕文
橋本絵莉子波多野裕文
B06ZXR5KWC