『海獣の子供』

 五十嵐大介の長編漫画を、松本大洋の『鉄コン筋クリート』などを手がけたSTUDIO 4℃が映画化したもの。

 まず、とにかくアニメとしての表現は素晴らしい!

 五十嵐大介の線が多くて動かしにくそうなキャラクターを見事に動かしているし、前半に見られるこった構図も魅力的。

 そしてなんと言っても海と海の生物の表現がきれいだし迫力がある。クジラの描き方にしても、普通の実写では見られないような肌の質感の見せ方とかがあってすごいですし、海の描写もCGをうまく使いながら鮮やかに見せています。

 日常の中の幻想的な風景とかもアニメならではの表現という形でうまく見せていますし、映像は文句なしです。

 

 一方、ストーリーは長い話をうまく再編集できなかった感じもあり、80年代以降繰り返されているニューエイジものの変奏に見えてしまう。

 主人公の琉花が、夏休みのはじめに海という名前のジュゴンに育てられた不思議な少年に出会い、そして世界の秘密のようなものに近づいていくのですが、その世界の秘密を解説する周囲の人物のセリフが多すぎて、説明的なんですよね。

 おそらく、原作にもあるセリフなんでしょうが、長い原作の中にばらばらに配置されていればそれほど気にならなくても、2時間の映画の中で連発されると、ややうるさくも感じます。

 せっかく、映像の圧倒的な力があるので、ここは下手に説明せずに感覚的にわからせるような方向でも良かったのではないかと思います(この点、アニメの『AKIRA』は「アキラが何なのか?」とか「結局、何が起こったのか?」をあんまり詳細に説明しようとしなかった点がうまかったと思う)。

 ちなみに主人公の声が芦田愛菜なんですが、芦田愛菜は本当になんでも器用にこなせますね。