『ホテル・ムンバイ』

 タイトルから「『ホテル・ルワンダ』のようなヒューマンドラマなのかな〜?」くらいにしか思っていなかったのですが、TwitterのTLで「傑作!」との声を聞いて見に行ってみたんですけど、確かにこれは面白い!近年でも出色の緊迫感を持った映画です。

 題材は2008年のムンバイ同時多発テロ。チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅、二カ所の五つ星ホテル(オベロイ・トライデントとタージマハル・ホテル)、ユダヤ教の礼拝所などがイスラーム過激派に襲撃されたテロ事件で、この中のタージマハル・ホテルが映画の舞台となります。

 

 ストーリーとしてはテロリストがホテルを占拠し、主人公のホテルのレストランで働く給仕や、客であるインド人のセレブな奥さんとアメリカ人の旦那とその赤ちゃんとベビーシッターらが、なんとかしてテロリストから隠れ、そして脱出しようとする話なんだけど、とにかく緊迫感があります。

 占拠されたホテルは密室なわけだけど、2008年というとスマートフォンなども普及し始めた頃で、携帯で連絡は取れるし、外からのニュースもスマートフォンなどで見ることができる。さらに犯人たちも黒幕と携帯で連絡を取りながら行動していて、この形態などでの連絡がピンチを救ったり、窮地を招いたりする。

 この構成は本当によくできていて、ありきたりのアクション映画では味わえない緊迫感を映画にもたらしています。ちょっとポール・グリーングラスの作品を思い出させます。

 

 また、この映画に緊迫感をもたらしているのがテロリストがほとんど少年と言ってもいいような人物たちであること。

 彼らはイスラーム過激派にスカウトされ、訓練を受け、そして携帯で黒幕から指示を受けながら犯行に及びます。「異教徒によって富を奪われた」と吹き込まれている彼らは冷酷な殺人鬼なのですが、同時にまったくプロフェッショナルではないので、一つひとつの行動に緊張感があり、そして思いがけぬ自体には動揺します。ここの描き方もうまいです。

 間延びしないように短く挟まれている人間ドラマの部分も印象的ですし、非常に良くできている映画だと思います。

 監督のアンソニー・マラスはこれが長編デビュー作とのことですが、注目すべき監督かもしれません。