小沢健二 / So kakkoii 宇宙

 いきなり、♪そして時は2020 全力疾走してきたよね/1995年冬は長くって寒くて 心凍えそうだったよね♪と強烈に90年代を思い起こさせる出だしで始まるアルバムですが、やはり90年代を強烈に意識させ、蘇らせるアルバムですね。

 

 そんな中で個人的に一番響いたのが、"アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)"。

 最初に聴いたときからシンプルながら美しい曲だなと思っていたのですが、何回か聴いた後に「これは岡崎京子のことを歌っているのではないだろうか?!」と思って調べてみたら、そもそも映画の『リバーズ・エッジ』の主題歌なのですね。情報に疎すぎた…。

 そのことを知った後だと歌詞などもなおさら染みてくるわけなのです、そういった背景は向きにしても途中で入るトランペットとかはここ最近聴いた曲の中でも屈指の美しさ。文句なしにいい曲だと思います。

 

 小沢健二の最近の活動に関してはまったくノーチェックというわけではなくて、Mステとかに出た時は見るようにしていて、"流動体について"や"フクロウの声が聞こえる"(SEKAI NO OWARIとコラボしたバージョン)とかは聴いていて、「良いけどけっこう小難しい歌詞だな」などと思っていたのですが、今回は冒頭の"彗星"をはじめとしてポップに寄せる部分は寄せてきた感じですね。

 特に"彗星"は「LIFE」の楽曲を期待するファンに応えた音になっていますし、冒頭にも書いたように歌詞がまるで「90年代同窓会」とった趣きです。

 一方、ラストの"薫る (労働と学業)"は、ポップですが「90年代的懐かしさ」とは離れた作品で、♪おそれることもなき好奇心を 図書館の机で見せつけてよ♪というフレーズが良いですね。

 

 ちょっと声が低くなったぶん、声のポップさのようなものは後退したかもしてませんが、50代になってもこれだけみずみずしいアルバムをつくれるというのはさすがで、90年代を知らない人にどれくらい響くのかわからない部分はありますが、個人的には期待を上回るアルバムでした。

 


小沢健二『彗星』MV Ozawa Kenji “Like a Comet”