『羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来〜』

 中国のアニメで読み方は「ロシャオヘイせんき」になります。

 冒頭は『もののけ姫』みたいですし、ラストに出てくる館は『千と千尋の神隠し』みたいと、ジブリを中心とする日本のアニメに強く影響を受けているのがわかるのですが、これは面白いし、よくできている。

 特にアニメの「動き」としては出色の出来で、ラストのバトルシーンを筆頭にダイナミックかつ想像力に満ちた動きにあふれていて、アニメならでは醍醐味を味わえる映画になっています。また、背景も森などの自然と街中でトーンを変えてくる感じで印象的です。

 

 主人公のシャオヘイは猫の妖精で、住んでいた森が人間によって切り拓かれてしまったことから流浪の旅に出て、そこで人間の姿に化けている妖精のフーシーと出会い、彼の仲間のもとに迎えられます。ところが、ムゲンと呼ばれる人間が現れてフーシーを捕らえようとし、シャオヘイとフーシーは離れ離れになり、シャオヘイはムゲンに捕らえられてしまいます。

 ここからシャオヘイとムゲンの互いに反発しながらのロードムービー的な展開があり、最後は中国の大都市を舞台としたムゲンとフーシーのバトルがあり、シャオヘイの秘密も明かされます。

 師弟関係的な展開や、最後の街中でのバトルシーンなど、ストーリー的には少し『バケモノの子』に通じるものもあります。

 

 ただし、例えば最後のバトルシーンを比べればこの『羅小黒戦記』のほうが良くできている。

 スピーディーかつダイナミックな動きと、Google Earthを思わせる俯瞰映像の組み合わせは上手いですし、ショッピングモールから結界の中へという背景の転換なども効果的ですね。

 

 日本のアニメは宮崎駿が緻密な書き込みとダイナミックな動きを両立させて以来、それに並ぼうと、あるいは乗り越えようと頑張ってきたわけですが、米林宏昌にしろ宮崎吾朗にしろ、どうしても宮崎駿ほどのダイナミックな動きを生み出せてはいないと思うのですが、この『羅小黒戦記』は、あえてキャラを単純化したり、絵を簡略化することで、それこそ宮崎駿に負けないようなダイナミックな動きを生み出しています。

 街中を走る車の動きとかはジブリじゃありえないような手の抜き方ですが、それでもここぞというところでは非常にクオリティが高く、最初から最後までアニメならではの楽しさを堪能できます。

 

 最後に、ギャグシーンの作り方とかも日本のアニメの影響を受けていますし、中国の現代的な街並みも日本に似ているのですが、地下鉄乗るのに金属探知機で手荷物検査を受けるところが日本とは違うところですかね。

 


『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』本予告映像