2020年の映画

 映画館で見た映画は15本(ブログで感想書いた14本と子どもと一緒行った『映画 プリキュアラクルリープ みんなとの不思議な1日』)。コロナの影響で3月から6月までの3ヶ月、そして6月から9月までの3ヶ月と映画を見ない時期がありましたが、その割には、けっこう面白い作本を見ることができたと思います。

 

1位 『1917 命をかけた伝令』

 

 

 サム・メンデス監督作品で、第一次世界大戦西部戦線を舞台に、前線の部隊に攻撃中止の命令を伝える伝令の体験を描いた映画。まるで、全編ワンカットで撮影したように構成されていて(途中で暗転するシーンもあるので相当な長回しをつないでいるのだと思いますが)、観客を没入させる形で戦場へと引きずり込みます。

 最初に味方の塹壕を歩き回るシーンでは。「一体どんなセットを組んでいるんだろう?」と思わず考えてしまいますが、だんだんとそういった考えが頭に浮かばなくなるほど緊迫感が増してきます。

 ラスト近くの味方の突撃の中を横切って走るシーンは素晴らしく、 近年の映画の中でも屈指のシーンではないかと思います。

 

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2位 『TENET テネット』

 

 クリストファー・ノーランの新作は時間の逆行というアイディアを取り入れたSFもの。映画の中にありえない世界を作り上げるという点では『インセプション』に似ていますが、やろうとしていることはさらにややこしいです。

 緻密なんだか大ボラなんだにわかには判別できない世界を作り上げ、それを『ボーン』シリーズ並みのアクションで、常に緊迫感を与え続けることでそれを押し通すのがノーランの力技ですね。

  <ジェイソン・ボーン>シリーズを思わせるアクションに、時間の逆行というややこしい要素を取り入れ、しかもそれを画にしてみせるというのはノーランならでは。

 

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3位 『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

  

 

 2018年の個人的ベスト映画『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督+主演シアーシャ・ローナンのコンビが放つ『若草物語』をベースとした映画。

 舞台は南北戦争当時のアメリカ・マサチューセッツ。メグ、ジョー、リズ、エイミーの四姉妹を中心に家族のさまざまな出来事を描いた原作を、シアーシャ・ローナン演じるジョーが『若草物語』を書くまでというメタ的な視点で再構成し、さらに女性の自立と自由というテーマを中心に据えることで、原作を現代にぐっと引き寄せています。

 「女性映画」としても優れているのですが、個人的にそれ以上に感心したのが、この監督の「あるある」的なシーンをつくる上手さ。『レディ・バード』もそうでしたが、ちょっとしたやりとりや、感情の動きを切り取ることが非常に巧みですね。姉妹の関係性とかを上手く描けています。

 

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4位 『パラサイト』

 

 

 カンヌのパルムドールを獲った話題作ですが、評判通り面白かったです。

 近年、『万引き家族』にしろ『家族を想うとき』にしろ、あるいは『ジョーカー』にしろ、格差社会を正面から取り上げた映画が多いですが、その中でもこの『パラサイト』のパンチ力はすごいですね。さすがポン・ジュノです。

 今までのポン・ジュノの作品に比べると、この『パラサイト』は、富裕層=高いところ、貧困層=低いところ、といった具合に様式的な撮り方がなされているのですが、一定の様式に従って撮られていてます。だからこそラストの爆発力は圧巻で、素晴らしいインパクトを残しますね。

 

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5位 『ラストレター』

  

 

 いろいろな語り方ができる作品だと思いますが、まず特筆すべきは松たか子のコメディエンヌとしての才能と森七菜のかわいさ。広瀬すずと森七菜を並べて森七菜のほうをかわいく撮れるのは岩井俊二ならではですね。『Love Letter』の酒井美紀もそうでしたけど、岩井俊二はちょっと薄めの顔の女優を非常にかわいく撮りますね。

 福山雅治演じる男は、まるで『秒速5センチメートル』みたいで、初恋の思い出に囚われていてしまっています。しかも、話は途中からかなり重たい展開となり、美しい思い出というわけにはいかなくなるのですが、この映画の肝は松たか子で、松たか子の「確かさ」のようなものが映画に安定感を与えているのだと思います。

 

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 次点は、パリ郊外の今をリアルに描いた『レ・ミゼラブル』。他にも『羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来〜』、『スパイの妻 劇場版』、『フォードvsフェラーリ』と、こんな状況にもかかわらず面白い映画が多かった1年だったと思います。