2021年の紅白歌合戦

 あけましておめでとうございます。

 今年もまずは去年の紅白の振り返りから始まるわけですが、去年の紅白の表のテーマが「カラフル」だったとすれば、裏のテーマは「反逆」あるいは「レジスタンス」と言ってもいいもので、非常に政治的な紅白だったと思います。

 

 では、何に対する「反逆」なのか?

 まずは東京オリンピックに対する反逆です。

 オリンピックの開催年、しかも自国開催であったにもかかわらずオリンピック、パラリンピックの扱いは非常に小さく、選手ではゲスト審査員の石川佳純と谷真海がいただけでした。

 いつも通りであれば、メダリスト大集合みたいなコーナーがあったはずですし、ゆずの歌唱曲は「栄光の架橋」で体操の橋本大輝を前にして熱唱するステージだったはずです。

 そして、アンチ・東京オリンピックがもっとも明確に示されていたのが、マツケンサンバTwitter上での五輪の開会式や閉会式に「マツケンサンバを出せ!」との声に答える形での登場であったことは明白でしたが、注目すべきは五輪開会式における劇団ひとりの小芝居を再現しつつ、マツケンサンバになだれ込んだ点。

 本番の五輪開会式では、劇団ひとりのスイッチオンから森喜朗のゴリ押しとも言われた海老蔵の登場とつながるわけですが、紅白ではそれを書き換えるわけです。

 さらに黄金のAKIRAバイクが登場しますが、これは当然ながら組織委員会によって葬り去られたMIKIKOの開会式のアイディアへの目配せであり、開会式を私物化した挙げ句に盛り上がるものが作れなかった組織委員会への直球の批判です。

 加えて、東京事変が「緑酒」を歌ったことにも注目で、歌詞の「大きな不安孕んだ正体憚る膨満感に噦いてどこから嚥下できようか未だ皆目消化不良だ」「ぺてんのない世の中を直ぐに作んなくちゃそう願わくばいっそ老いも若いも多弁であれ」「自由よいいように搾取されないで安く売らないで終始貴様は誇り高くあって頼むよ自由」といった部分は、自ら五輪の開会式に加わりながら降りざるを得なかった椎名林檎の想いを乗せた歌詞と言えるでしょう。

 

 では、なぜこの年末の紅白でこうした動きが出てきたのか?

 夏の五輪のときから現在で大きく変わった部分といえば菅政権の退陣です。今まで安倍ー菅ラインに首根っこを押さえられていたNHKが岸田内閣の誕生とともに一定の自由を取り戻しつつあると考えるのが妥当でしょう。

 

 なお、今回の紅白に関しては「お笑い芸人の不在」、「よしもと芸人の不在」という非常に興味深い動きもあるのですが(けん玉で出てきたぺこぱは非よしもと)、これも今後の注目点かと思われます。

 

 では、ここからは各歌手の短評を

 

LiSA→後半のゲーム・アニメコーナーも合わせれば2曲をほぼフルでの歌唱で、歌手の力とともに煉獄さんの力の偉大さ

NiziU→少しカットされていましたが、そのことに長女はご不満で、細川たかしが2曲歌ったときに「この人が1曲だけならフルで歌えたんじゃないか」とご立腹でした。

YOASOBI with ミドリーズ→みんながなれないダンスをする中、後ろで黙々とけん玉をする三山ひろし

純烈→マジックハンド+消毒握手はちょっと面白かった。やはりゴールデンボンバーポジションですね。

SixTONES→朝ドラとは雰囲気の違う稔さん。パッと見わからなかった。

天童よしみ→次女の「この人の服トサキントみたい!」にツボってしまって歌をちゃんと聴けなかった。すいません。

KAT-TUN→歌詞の♪ギリギリでいつも♪のところが「メンバー的にギリギリだということを表しているのか?」と思ってしまう…。

milet→これはすごい難しそうな歌ですね。カラオケで歌えたらマウント取れそう。

まふます→素直に驚いた。新聞で白組であることを確認しちゃったほど。こんな女性みたいな高音を出せる人はそうそういないはず。

AI→ちょっと硬かったけど、一本調子でスケール感を広げられる歌唱力はさすが。

三山ひろし→記録達成おめでとう!でも、2年連続成功で今年はどうするの?とはなると思う。

平井大→洋楽的なメロディにコテコテJ-Popの歌詞が乗っているのがウケる理由ですかね。

millennium parade × Belle (中村佳穂)→今回の紅白の中でももっとも凝っていた楽曲でしょうね。フォークっぽい曲が強い中だとこういう曲も必要だよなと。

藤井風→中継ではさすがに音がしょぼいので「これは少し残念ではないか?」と思ったら、まさかの登場。そしてラストはMISIAとコラボと、ある意味で第二部の主役のような感じでしたね。

鈴木雅之→「今さらめ組のひと?」と思ったけど、やはり楽しい曲ですね。

ゆず→岩沢ファンとしては「虹」はいい。岩沢厚治のソロアルバムとか出ないのか?

BUMP OF CHICKEN→「天体観測」をやったのは「なないろ」だけだとVTRを流しただけになっちゃうから?でも、改めてBUMP OF CHICKENの歌詞が後のアーティストに与えた影響はかなり大きいんじゃないかと思う今日このごろ。

薬師丸ひろ子→この年齢になっても驚くべき声の綺麗さ。今回の紅白の中で2番目に良かった。

氷川きよし→今回の紅白の中で1番良かった!氷川きよしは最近の人間としては珍しく芸道に人生を捧げている感じがありますよね。

MISIA→1曲目のラストですべてを振り絞っての絶唱と思いきや、2曲目になだれ込める驚異の排気量。歌手としての排気量は圧倒的ですね。

 

 

 勝敗的には審査員が全員白組に入れたものの客席とお茶の間で紅組の勝利。全体を通してみれば紅組が勝つのは当然という感じなのですが、客席とお茶の間があっさりと紅組になるところに「嵐の不在」、さらにいえばSMAP〜嵐と維持されてきたジャニーズ王朝の退潮を感じざるを得ませんね。

 あとはエヴァのところで、わざわざ主要キャラのアフレコをとってきたところに紅白にかける想いを感じました。普通ならミサトさんだけでしょ。