2022年の映画

 今年は去年よりはちゃんと映画を見た気がします。ただし、相変わらず立川シネマシティでやってないとどうしても見逃しちゃう問題はあって、やはり見ている人に比べれば見れていないんだと思います。

 それでも、とりあえずは今年の5本をあげておきます。ちなみに今年見た作品だと『ドライブ・マイ・カー』も素晴らしかったですが、さすがに今年の映画にあげるのはどうかと思ったので、それ以外で5本選んでいます。

 

1位 『ベイビー・ブローカー』

 

 

 映画の始まりと終わりはやや強引で、脚本的には穴もあると思いますが、洗車場で子どもが思わず窓を開けてしまってそこで疑似家族が成立するシーンはすごく上手いですし、他にも印象的なシーンがいくつかあり、さすが是枝裕和という感じです。

 そして、やはり役者がいいです。日本の「赤ちゃんポスト」がモチーフになっていて、日本でも撮れた作品かもしれませんが、じゃあ役者は誰にやらせるの? となると、なかなか思いつかない。

 

 

2位 『NOPE/ノープ』

 

 

 人を襲っているらしきチンパンジーの姿が写り、さらに画面が変わって黒人の親子が牧場で馬の調教をしていると、空模様が怪しくなり、空からコインが降ってきて父の頭に直撃して父が亡くなる。

 この映画の冒頭のシーンを見て、監督のジョーダン・ピールについてまったく前知識のなかった自分は「これはデビッド・リンチみたいな感じか?」と思いながら、見ていましたが、リンチではないですね。

 そして、だんだんと「これはシャマランなのか?」となるのですが、後半になるとどんどんと映画は加速していき、『AKIRA』への明らかなオマージュや『エヴァンゲリオン』的なものまで登場して、スケールが大きいのだか、そんなに大きくないのだかよくわからないようなスペクタクルが展開されます。面白かったです。

 

 

3位 『クライ・マッチョ』

 

 

 クリント・イーストウッドが91歳にして主演した映画で、さすがに足元がおぼつかない感じはあるのですが、枯れたぶん、まさにイーストウッドな感じの映画です。

 本作のテーマはマッチョイズムの否定でもあるわけですが、「マッチョイズムの有害性」をことさらに描いたり、それを象徴するようなシーンを特につくりこまずに、あっさりとイーストウッドの口から「俺はわかったんだ」と言わせて終わらせるところが味わい深いですね。

 

 

4位 『犬王』

 

 見終わった最初の感想は「これはクイーンであり、犬王はフレディ・マーキュリーだ」ということ。映画の中のかなりの時間をステージのシーンが占めているのですが、それがとにかく過剰。

 湯浅政明監督は、アニメならではのさまざまな効果を存分に使って作品を見せる監督ですが、今回はありとあるゆる演出方法が詰め込まれれている感じで、とにかく派手で華麗です。これほどいろいろなアニメの演出を楽しめる作品はなかなかないでしょう。

 

 

5位 『すずめの戸締まり』

 

 『君の名は。』で明らかに東日本大震災のイメージを見据えた映画を作った新海誠が真正面から東日本大震災を描いた作品。

 「今ある風景が失われてしまうかもしれない」というのは、『君の名は。』にも『天気の子』にも共通するモチーフですが、本作ではすでに失われてしまった風景を通じて、かつての人々の生活に思いを馳せるという形になっており、このあたりも一歩踏み込んだ感じです。

 ただし、震災を真っ向から描いただけに、トリッキーなラストはつくりにくく、『君の名は。』や『天気の子』のラストにあった「こう来たか!」みたいな感じはないですね。