『ケイコ 目を澄ませて』

 評判がいいので見てきましたが、まず主演の岸井ゆきのが素晴らしく良かったですね。

 岸井ゆきのをちゃんと見たのは朝ドラの「まんぷく」くらいで、年齢不詳な感じながら(中学生くらいの年齢から演じてた?)、安藤サクラ長谷川博己松坂慶子の間に入っても非常にいい感じだったので、将来はコメディエンヌとして活躍するのかと思っていたら、今回はぜんぜん違う役でした。

 

 今回演じているのは聴覚障害者の女子プロボクサーという役で、手話も含めて寡黙ですし、とにかく身体で演じなければならないような役なのですが、それを見事にこなしてます。

 撮影前にボクシングのトレーニングをしたそうですが、このボクシングシーンも決まっていて、特にジムでトレーナーとボクシングのコンビネーションのルーチンを繰り返すシーンは素晴らしいですね。

 そして、ボクシングというのはやはり映画の画として映えるスポーツなんだなとあらためておもいました。

 

 また、聴覚障害者がボクシングをやる難しさというのも描かれていて、セコンドの声も聞こえないので試合中にアドバイスを受けられないし、でもセコンドは黙っているわけにはいかないので、聞こえないにもかかわらず指示を出し続けているというところもありました。

 一方で、練習では会長やトレーナーがやって見せて、それを岸井ゆきのが真似していくというシーンがあって、これはいずれも良かったですね。

 

 あと、この映画の良さは東京の荒川沿いの風景ですね。

 荒川沿いの古びたジムが舞台になっており、主人公のロードワークや日々の生活の中でたびたび荒川沿いの風景が写るのですが、河川敷、鉄橋、首都高、密集する住宅や工場といった具合に、やや時代から取り残されたような荒川沿いの風景がよく撮れています。

 

 さらにメジャーな作品になるには、ストーリー的にもう少しメリハリや主人公の外形的な変化が必要なのかもしれませんが、非常に良いシーンが多かった映画であることは確かです。