『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

 今の時期に主要人物を中国系で固めて娘の同性愛などを取り込む意識の高さと、「マサルさんか?変態仮面か?」という意識の低さが同居している怪作。

 映画.comのあらすじ紹介は次の通り。

 

 経営するコインランドリーは破産寸前で、ボケているのに頑固な父親と、いつまでも反抗期が終わらない娘、優しいだけで頼りにならない夫に囲まれ、頭の痛い問題だらけのエヴリン。いっぱいっぱいの日々を送る彼女の前に、突如として「別の宇宙(ユニバース)から来た」という夫のウェイモンドが現れる。混乱するエヴリンに、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と驚きの使命を背負わせるウェイモンド。そんな“別の宇宙の夫”に言われるがまま、ワケも分からずマルチバース(並行世界)に飛び込んだ彼女は、カンフーマスターばりの身体能力を手に入れ、全人類の命運をかけた戦いに身を投じることになる。

 

 かなりぶっ飛んだ設定ではありますが、別の宇宙(ユニバース)にいる自分にアクセスしてチートな能力を手に入れるというのは日本のマンガやアニメやラノベとかにありそうな設定であり、しかも別のユニバースにアクセスするためにはできるだけ突拍子もない予測不可能な行動をしないという設定もあって、ネット記事でも指摘されていましたけど『セクシーコマンドー外伝すごいよマサルさん』の世界です。

 実際、敵の中にはいきなりズボンを脱ぎだすやつとかもして、「マサルさんにインスパイアされた作品だ」と言われても驚かないですね。

 

 ただし、日本のマンガやアニメと違うのは主人公をおばさんに設定し、その夫と娘で華族のドラマをしっかりと設定しているところ。

 そして、主人公にミシェル・ヨー、夫にキー・ホイ・クァンをあてているところが本作の成功要因でしょうね。

 冴えないおばさんが急に別の世界にアクセスしてカンフーマスターになるわけですが、最初からミシェル・ヨーというキャスティングないとなかなか思いつかないかもしれません。

 

 さらに特筆すべきがキー・ホイ・クァンの「ヒロイン力」の高さ。

 映画ではキー・ホイ・クァンがエヴリンを目覚めさせる役と、さらには現実世界に引き留める碇のような役を果たしているのですが、いずれにおいても高いヒロイン力を誇っています。

 この作品がアカデミー賞の作品賞を獲るようには思えないんですけど、キー・ホイ・クァン助演男優賞はぜひ獲ってほしいですね。

 

 面白かったですけど、個人的には少し長く感じました。描くマルチバースを整理してもう少し短くしたら、もっとキレキレになったのではないでしょうか。