ジョー・ホールドマン『ヘミングウェイごっこ』読了

 1922年にパリで失われたヘミングウェイの原稿、その原稿はいまだに見つかっておらず、事件の真相は謎に包まれたままになっている。その失われた原稿を偽造としようとするヘミングウェイオタクで文学部の准教授の主人公ジョンと、それを手伝う詐欺師のキャッスル。しかし、その企ては歴史に大きな波紋を巻き起こすものらしく、タイムパトロール隊みたいな組織がそれを監視しはじめた…。
 というふうに書くと、変な小説だとは思いつつもSF好きにはそれなりに「こんな小説じゃないか?」って想像が浮かぶと思います。確かに、ヘミングウェイの贋作を書くためのオタク的な知識がちりばめられていますし、タイムパラドックスが問題となります。
 ですが、それほど長くはない小説の中でお色気満点の騙し合いが始まり、ベトナムの傷が語られ、そして世界は混乱していくというこの小説の展開はふつうの想像を遥かに超えたものです。
 そして、圧巻は第28章「午後の死」での時間の逆回転のシーン!
 このイメージは素晴らしいと思う。
 「デヴィッド・フィンチャーかなんかに映像化して欲しい!」と思いつつも、「お色気と騙し合いを考えればタランティーノかな?」なんて映画化の夢も膨らみますが、こんなわけわかんない話の映画化は、まあ無理でしょう。
 と思いましたが、『マルコヴィッチの穴』とか『エターナル・サンシャイン』の脚本書いたチャーリー・カウフマンならうまく脚本にしてくれるかも。そう、この『ヘミングウェイごっこ』の世界ってチャーリー・カウフマン的世界です。
 非常にとっ散らかった感想になってしまいましたが、奇妙で面白い小説を読みたい人はぜひ!


ヘミングウェイごっこ (ハヤカワ文庫SF)
Joe Haldeman 大森 望
4150116997