哲学

東浩紀『訂正可能性の哲学』

『ゲンロン0 観光客の哲学』の続編という位置づけで、第1部は『観光客の哲学』で提示された「家族」の問題を、本書で打ち出される「訂正可能性」という考えと繋げていく議論をしていきますが、第2部は『一般意志2.0』の続編ともいうべきもので、『一般意思2.…

玉手慎太郎『公衆衛生の倫理学』

新型コロナウイルスの感染拡大の中で、まさに本書のタイトルとなっている「公衆衛生の倫理学」が問われました。外出禁止やマスクの着用強制は正当化できるのか? 感染対策のためにどこまでプライバシーを把握・公開していいのか? など、さまざまな問題が浮…

木山幸輔『人権の哲学』

本書の書き出しは次のようなものです。 本書の目的は、人権に確定性を与えつつ、当該概念を適切に正当化する、そうした構想を提示することにある。より具体的にいえば、本書の目的は、人権の適切な構想として自然本性的構想、なかんずく二元的理論と本書が呼…

フランチェスコ・グァラ『制度とはなにか』

著者はイタリアの哲学者で、以前に出した『科学哲学から見た実験経済学』が翻訳されています。昨年、『現代経済学』(中公新書)を出した経済学者の瀧澤弘和が監訳していますが、内容的には哲学の本と言っていいでしょう。 ただし、その内容は社会科学と密接…

 アマルティア・セン『アイデンティティと暴力』

少し前に読んだ本で感想を書きそこねていたのですが、これは良い本ですね。現代における理想主義の一つの完成形ともいえるような内容で、理想主義者はもちろん、理想主義を絵空事だとも思っている現実主義者の人も、ぜひ目を通して置くべき本だと思います。 …

 アマルティア・セン『正義のアイディア』

ノーベル経済学賞の受賞者で、狭い意味での経済分野にとどまらず政治哲学などの分野でも積極的な発言を行っているアマルティア・センの政治哲学分野における代表作。 とにかくセンの凄さを感じさせるのが冒頭の謝辞。ジョン・ロールズやケネス・アローからは…

 東浩紀『ゲンロン0 観光客の哲学』

現在、「4」まで出ている東浩紀責任編集の雑誌『ゲンロン』。その予告号としてアナウンスされれていた本ですが、遅れに遅れた結果、これからの展望の予告だけではなく、まさに東浩紀の「集大成」的な本になりました。 「観光客」というキーワードを用いつつ…

 ジェイン・ジェイコブズ『市場の倫理 統治の倫理』

『アメリカ大都市の生と死』で知られるジェイコブズが社会における2つの道徳体型について語った本。以前から読みたいなと思って、古本屋などで探していたのですが、今年の2月にちくま学芸文庫から復刊されたので読んでみました。 この本の、「道徳体型には…

 ジョン・パスモア『分析哲学を知るための 哲学の小さな学校』

タイトルと表紙を見ると、「分析哲学のやさしい入門書」といった趣きですが、分析哲学を知らない人がこの本を手にとってもさっぱりわからないでしょう。この本は入門書ではなくて、それなりに分析哲学について知っていて著作も何冊か読んでいる人が、その知…

 リチャード・ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』

やはり読んでおくべきだろうと思って読んでみました。 近年の哲学の中では珍しく「明解」な本。しかも、かなり大きな話をしています。 ニーチェ、ハイデガーの影響を色濃く受ける大陸の哲学と、それとはまったく別のかたちで言語の問題を中心に営まれてきた…

 ドナルド・デイヴィドソン『真理・言語・歴史』

デイヴィドソン死後に刊行された最後の論文集。以下の論文が収録されています。 第1部 真理 第 1論文 真理の復権 第 2論文 真理を定義しようとすることの愚かさ 第 3論文 方法と形而上学 第 4論文 意味・真理・証拠 第 5論文 真理の概念を追って 第 6論文 …

 東浩紀『一般意志2.0』

読み終わったけど、どう語ろうか悩む本でもある。 とりあえず面白かったし、わかりやすい。そして「ルソーの一般意志の考えがGoogleやTwitterやニコニコ動画によって新しい形で実現する」というこの本のアウトラインを聞いたときにパッと思いつく反論に対し…

 ドナルド・デイヴィドソン『合理性の諸問題』

この日記を見直しみたら本格的な分析哲学の本を読むのはクリストファー・チャーニアク『最小合理性』以来2年ぶりくらい。そしてデイヴィドソンの『主観的、間主観的、客観的』以来3年半ぶりくらいということで、正直苦戦しました。 チャーニアクのときにも書…

 ガザニガ『人間らしさとはなにか?』による「近親相姦はなぜタブーか?」

分離脳の研究の第一人者であるマイケル・S. ガザニガが、専門脳科学だけにとどまらず、発達心理学や認知心理学、進化生物学、人工知能研究など様々な知見を元に「人間のユニークさ」を探求した本。 600ページを超える大著で目次はこんな感じ。 はじめに:人間…

 マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』

サンデルと言うと、かなり昔に『自由主義と正義の限界』を読んだことがあるけど、まああんまり印象に残らなくてその名前だけを覚えてた。ところが、NHKの「ハーバード白熱授業」が話題を読んでこの本もベストセラー。僕が先月買ったやつでもう24刷ですからね…

 クリストファー・チャーニアク『最小合理性』読了

久々の分析哲学の本でやや読むのに時間がかかりました。年とると、「難しかろうが何が何でも読み切る!」という気迫というか執念というかが薄れちゃってダメですね。 といっても、この本はそんなに難解な本ではない。「もっとわかりやすい例や説明があるだろ…

 ドナルド・デイヴィドソン『主観的、間主観的、客観的』読了

ドナルド・デイヴィドソン『主観的、間主観的、客観的』を読了。 デイヴィドソンを知らない人にとって、「主観的、間主観的、客観的」なんてタイトルを聞くと、いかにも固くてつまんなそうな本に思えるでしょうが、これがなかなかスリリングでラディカルな本…

 イアン・ハッキング『何が社会的に構成されるのか』読了

フジにDamien Rice!これは行くしかない。今までぜんぜん漲ってこなかったフジロックだけど、いきなり漲ってきた! イアン・ハッキング『何が社会的に構成されるのか』を読了。『言語はなぜ哲学の問題になるのか』、『記憶を書きかえる』などの著者として有…