国内小説

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

村上春樹の小説に関しては『1Q84』を読んで、「今後はこんな感じの変奏なのかな?」と思い、しばらく読んでいなかったのですが、読む予定だった海外小説が店頭になかったりしたので、読んでみました。 読んだ感想としては、やはりなかなか面白い。20歳の…

 舞城王太郎『淵の王』

久々の舞城王太郎作品。今、このブログをさかのぼってみたら前に読んだのは2010年の『獣の樹』と『イキルキス』。『イキルキス』の中の「パッキャラ魔道」は良かったんですけど、『獣の樹』がいまいちだったのと、その前の超大作『ディスコ探偵水曜日』がい…

 東山彰良『流』 

ご存知、第153回直木賞を受賞作。ここ最近、海外文学ばかりを読んでいたのですが、台湾生まれの著者が台湾と日本と大陸の歴史を舞台にした作品ということで興味がわき、文庫化されたのを機に読んでみました。 カバー裏の紹介文は以下の通り。 一九七五年、台…

 阿部和重・伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』

阿部和重と伊坂幸太郎という驚きのタッグによって書かれた長編小説。しかも、連作短編のようになっているとか2つの話が組み合わさっているとかではなく、完全に一つのストーリーを二人が創り上げています。インタビューなどを見ると章ごとに交互に書いていっ…

 坂上秋成『昔日のアリス』

かつて、ギャングについてとても華やかな文章を書いた小説家がいたわ。はじめてその小説を読んだ時、私は大声で泣いた。それほどに圧倒的な言葉だった。ああ、これでもう私はギャングについて何一つ語ることができなくなってしまったのだって、そう考えた。…

 村上春樹『1Q84』

文庫になった+夏休みということでようやく読んでみました。 浅間山荘事件を思わせる「あけぼの」の銃撃戦、そしてその「あけぼの」と袂を分かった新興宗教「さきがけ」。その「さきがけ」は山梨県に本拠地があってインテリ層も集める新興宗教で…ってなると…

 赤坂真理『東京プリズン』

女性誌について分析しながら、そこを突き抜けて、「戦争」、「アメリカ」、「敗戦の記憶」といったものにまで、現代の男女がおかれた状況の遠因をたどろうとした新書『モテたい理由』。 非常に面白く読んだと同時に、それまでまったく関心のなかった赤坂真理…

 津原泰水『バレエ・メカニック』

造形家である木根原の娘・理沙は、九年前に海辺で溺れてから深昏睡状態にある。「五番めは?」―彼を追いかけてくる幻聴と、モーツァルトの楽曲。高速道路ではありえない津波に遭遇し、各所で七本肢の巨大蜘蛛が目撃されているとも知る。担当医師の龍神は、理…

 伊藤計劃『ハーモニー』

2009年に亡くなった伊藤計劃の最後の長編作品で、第30回日本SF大賞受賞作品。さらに英訳版がフィリップ・K・ディック記念賞の特別賞を受賞しています。 本のカバーに書かれた内容紹介は次の通り。 21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類…

 高橋源一郎『恋する原発』

「制御棒挿入」、「燃料棒」「メルトダウン」、「炉心溶融」、「核燃料の露出」 こう並べると原発事故の用語が何か性的なものに見えてきませんか? おそらく、この『恋する原発』の着想はそういったところになったのでしょう。 『あ・だ・る・と』で、アダル…

 辻村深月『水底フェスタ』

自然を切り崩し、ロックフェスを誘致する以外に取柄もない山村。狭い日常に苛立つ高校生の広海は、村出身の女優・由貴美と出会い、囚われてゆくが、彼女が戻ってきたのは「村への復讐のため」。半信半疑のまま手伝う広海だが、由貴美にはもう1つ真の目的が…

 村上春樹『国境の南、太陽の西』

先日読んだ宇野常寛『リトル・ピープルの時代』で、「村上春樹が「蜂蜜パイ」や『1Q84』で見せた、『父になる』という形のデタッチメントからコミットメントへのやり方は安易だ」という批判を読んで、「例外的に主人公が普通に父親になっている『国境の南、…

 吉田修一『悪人』

今さら何かを言う小説でもないんでしょうけど上手いですね。 テレビ埼玉を見ていた人にしかわからないネタで言うと「うまい!うますぎる!十万石まんじゅう」という感じです。 何が上手いかというと、「殺人」という日常とは隔絶した行為を日常の続きとして描…

 辻村深月『子どもたちは夜と遊ぶ』

久々の翻訳ものでない小説。辻村深月は『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』が素晴らしかったので他のも読んでみたかったのです。 この小説は辻村深月の2作目の小説で、もとは講談社ノベルスからリリースされたもの。ノリは舞城王太郎とか佐藤友哉とか西尾維新とか…

 上田早夕里『華竜の宮』

今年は去年なくなった伊藤計劃氏の『虐殺器官』が文庫化され、そのスケールの大きさや世界観が話題になりましたが、それに負けていない、というかエンターテイメント性なんかを考慮すれば『虐殺器官』を上回っているんじゃないかと思ったのがこの『華竜の宮…

 舞城王太郎『獣の樹』

『山ん中の獅見朋成雄』に出てきた背中に鬣があってむちゃくちゃ早く走る成雄が再登場する小説。ただ、同一人物ではないみたいで、こちらには「獅見朋」って苗字はなくて、いきなり14歳くらいの歳格好で名前も記憶もないまま馬から生まれてくる。 というわけ…

 舞城王太郎『イキルキス』

中編集で2008年発表の「イキルキス」、2002年発表の「鼻クソご飯」、2004年発表の「パッキャラ魔道」を収録。 ふつうは表題作でもあり、収録作の中でも一番新しい作品でもある「イキルキス」に注目して感想を書くべきかもしれませんが、「イキルキス」は西暁…

 桐野夏生『I'm sorry,mama. 』

ストーリーとしてはいまいち展開しきれなかった感じで、ラストはかなり強引な展開。ただ、登場人物の描き方は桐野夏生ならではの容赦のなさ!「ちょっとした変人」のような人間を書かせるとほんとうまいですね。 この小説、主人公は置屋で生まれ施設で育ち自…

 高橋源一郎『「悪」と戦う』

「高橋源一郎の舞城王太郎化」、この小説を一言で表すとしたらこの言葉になります。 3歳のランちゃんと1歳半のキイちゃんの兄弟。 この兄のランちゃんが時空を超えて、これからあるかもしれない、あるいはあったかもしれないパラレルワールドで「悪」と戦…

 桐野夏生『東京島』

清子は、暴風雨により、孤島に流れついた。夫との酔狂な世界一周クルーズの最中のこと。その後、日本の若者、謎めいた中国人が漂着する。三十一人、その全てが男だ。救出の見込みは依然なく、夫・隆も喪った。だが、たったひとりの女には違いない。求められ…

 阿部和重『ピストルズ』

『シンセミア』に引き続く「神町サーガ」の第2弾。 『シンセミア』の事件後の神町を描き、さらには『グランド・フィナーレ』や『ニッポニア・ニッポン』、『ミステリアス・セッティング』とまでつながっている作品。こう書くと、まさに阿部和重の総決算とも…

 辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』

「私は彼女に言いました。すべてを人のせいにして呪うなら、悪いのは高校の先生じゃない。あなたの限界を決めたのはあなたの親だ、と」 「教えてくれなかったのは、見せようとしなかったのは、あなたと同じくその世界を知らなかったお母さんたちだ、と、私は…

 桐野夏生『リアルワールド』

高校三年の夏休み、隣家の少年が母親を撲殺して逃走。ホリニンナこと山中十四子は、携帯電話を通して、逃げる少年ミミズとつながる。そしてテラウチ、ユウザン、キラリン、同じ高校にかよう4人の少女たちが、ミミズの逃亡に関わることに。遊び半分ではじまっ…

 舞城王太郎『ビッチマグネット』

タイトルの「ビッチマグネット」とは、ビッチな女性を引き寄せてしまう男のこと。主人公の弟にその属性(?)があるようです。 と、なかなか面白い語感のタイトルですが、この小説は「ビッチマグネット」や「ビッチ」についての小説というわけではありません…

 東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』

東浩紀の小説なんだけど、これは面白い! イーガン的な量子力学を使った多重世界を舞台に、村上春樹から赤木智弘から秋葉原事件からエロゲーからP・K・ディックから郊外論からベーシック・インカムからセカイ系と決断主義から私小説的なものまで、近年、東浩…

 三崎亜記『となり町戦争』

前から少し気になっていたんですが、ブックオフで見つけたので読んでみました。 となり町との間で進められる目に見えない奇妙な戦争を描いた小説です。その奇妙な戦争の様子が非常によく書けています。 例えば、となり町の広報誌に書かれた「さあ、終戦だ!…

 伊坂幸太郎『魔王』

久々の日本人作家の小説。 伊坂幸太郎は『重力ピエロ』だけ読んだことがあって、印象はいまいち。ただ、この『魔王』は日本に出現したファシスト政治家を描いているというとこに興味を持って読んでみました。 この『魔王』は「魔王」と「呼吸」という2つの…

 桐野夏生『グロテスク』

東電OL殺人事件をモデルにした小説ですが、事件をなぞるのではなく、事件からはるかに深くそしてまさに「グロテスク」な世界を描いてみた傑作。 桐野夏生は『残虐記』を読んだことがあったのですが、『残虐記』は面白いもののやや図式的な気がしましたが、こ…

 江國香織『きらきらひかる』読了

普段なら絶対に読まないタイプの小説なのですが、生徒が貸してくれたので読んでみた。 妻はアル中、夫はホモという夫婦を描いた作品ですが、精神医学的にいえば、ここで描かれている関係は共依存ですね。妻は漠然とした不安を抱えて旦那に物を投げつけて暴れ…

 村上春樹『東京奇譚集』読了

旅行に持っていくためにけっこう前に買ったんですが、そのまま放置してました。 収録作は「偶然の旅人」、「ハナレイ・ベイ」、「どこであれそれが見つかりそうな場所で」、「日々移動する腎臓のかたちをした石」、「品川猿」の5篇。 正直、村上春樹の小説…