心理
教員という職業柄、人の顔はたくさん見ている方だと思うのですが、たまに兄弟でもないのに「似ている!」と感じる顔があったり、双子で顔のパーツは本当に似ているのに並んでみると少し顔の印象が違ったり、顔というのは本当に不思議なものだと思います。 ま…
現在の若者、あるいは若者にとどまらず多くの人にとって問題となっている「承認」の問題。著者の斎藤環は、その問題を冒頭で次のように簡潔にまとめています。 他者の許しがなければ、自分を愛することすら難しい。承認依存とは、つまるところそういうことだ…
2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが、自らの研究の成果を一般読者にもわかりやすく説明した本。文句なしに面白いです。 今まで行動経済学の本を何冊か読んできましたが、ほぼすべての理論の元ネタがこの本で本家によって解説されてい…
ちくま学芸文庫・中井久夫コレクションの最後(だったはず)をかざるのは、中井久夫の書評やあとがき、読書アンケートなどを集めたもの。 ただ、第1部のポール・ヴァレリーについて書いたものに関しては「書評」といったレベルのものではなく、かなり本格的…
精神科医・成田善弘の自選臨床論文集。論文選択は編集者が提案し、それをもとに成田善弘が少し差し替えた程度らしいですが、総論的なものからはじまり青年期の患者への治療、境界例への臨床事例、コンサルテーション・リエゾンなど幅広いテーマにわたってお…
ちくま学芸文庫の中井久夫コレクションの第4巻。 『世に棲む患者』は著作集の第5巻「病者と社会」を中心に、『「つながり」の精神病理』は著作集の第6巻「個人とその家族」を中心に、『「思春期を考える」ことについて』は著作集の第3巻「社会・文化」を中心…
斎藤環が自分の基本的な考えを説明するときによく使う言葉に「変われば変わるほど変わらない」というものがあります。これは社会がいくら変わっても人間性は変わらないといった認識を示すものとして使われるのですが、この笠原嘉『再び「青年期」について』…
ちくま学芸文庫の「中井久夫コレクション」シリーズは、今までもこのシリーズに関してはさんざん「いい!」と書いてきたわけですが、この『「思春期を考える」ことについて』もとても刺激を受ける1冊。特に教育関係者にはぜひ読んでもらいたい1冊です。 精神…
『うつ病臨床のエッセンス』につづく、「笠原嘉臨床論集」シリーズの第2弾。 大学教員からクリニックの開業医となった著者が「外来精神医学」という、病棟で行われる精神医療とはまた違った治療について述べた本で、笠原嘉ならではの落ち着いたわかりやすい…
タイトルには「社会的うつ病」という言葉を使っていますが、いわゆる「新型うつ病」とその治療方法に関する本。もともと斎藤環の専門は「ひきこもり」でうつ病を特に重点的に診てきたわけではありません。ところが、その「ひきこもり」の治療法が「新型うつ…
『世に棲む患者』につづく「中井久夫コレクション」の第2弾。『世に棲む患者』は『中井久夫著作集』第5巻「病者と社会」の中に収められた文章を中心に編まれたものでしたが、こちらは『中井久夫著作集』第6巻「個人とその家族」からセレクトされています。 …
『精神科医がものを書くとき』、『隣の病い』につづく、ちくま学芸文庫の中井久夫選集。 前2冊は、『精神科医がものを書くとき』の単行本を2冊に分けて文庫化したものですが、この『世に棲む患者』は『中井久夫著作集』第5巻「病者と社会」の中に収められた…
一昨日紹介した細澤仁『心的外傷の治療技法』で書ききれなかったフェレンツィの考えと技法についてメモ。 フェレンツィは性的虐待が起こる状況として母親との疎遠な関係についても触れている。母親のネグレクトを背景にして、愛情を求める子どものこころを父…
http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20080808/p1でとりあげた『解離性障害の治療技法』の続編とも言える本が、同じみすず書房から登場。 「続編」と書きましたが、タイトルからすると「解離性障害」と「心的外傷」なんだから別のことを扱っているんじゃない…
この本の存在は 笠原嘉『妄想論』(笠原嘉『妄想論』 - 西東京日記 IN はてな)で知りました。序文を神田橋條治が書いているので、神田橋條治の『精神療法面接のコツ』みたいな内容かと思いましたが、「名人芸」的な知恵が詰まっていた神田橋條治の本に比…
分離脳の研究の第一人者であるマイケル・S. ガザニガが、専門脳科学だけにとどまらず、発達心理学や認知心理学、進化生物学、人工知能研究など様々な知見を元に「人間のユニークさ」を探求した本。 600ページを超える大著で目次はこんな感じ。 はじめに:人間…
みすずのHeritageシリーズの1冊。もとは今から30年以上前の1978年に描かれた論文です。 著者は「解説」で「わずか三十年前の記述なのに「何となじみのない話」と現代の読者は当惑されるのではないか」と書いています。確かにこの本でさかんに引用されている…
思春期事例の治療は入口がいくつもあって、出口が一つしかない迷路のようなものだ。症状としての見かけは多様だが、目標となるのはほぼ一点、「成熟」の一語に尽きる。(4p) 斎藤環が『こころの科学』に書いた文章を中心に編まれた評論集。 引用した言葉は帯…
ボウルビィが提唱したアタッチメント理論、これを幼児期だけではなく思春期にも適用し、カウンセリングの場などに生かして行こうとする本です。 「アタッチメント」とは、人が危機的状況にあるとき、信頼できる特定の誰かに接触することで安心感を取り戻そう…
http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20090826/p1で紹介した『精神科医がものを書くとき』の続編と言っていいのがこの本。もともと、文庫になる前は『精神科医がものを書くとき』という1、2巻の単行本だったのですが、それが文庫化に際して再構成されて違う…
「物まね細胞」とも呼ばれるミラーニューロンについてわかりやすく解説した本。 「人間がなぜ他者の痛みを自分の痛みのように感じる場合があるのか?」、「ドラマなどを見てなぜ登場人物と同じような感情を持つのか?」といったことは、昔から哲学の分野など…
みすず書房で新しく始まった精神医学の名著を紹介する<精神医学重要文献シリーズ Heritage>の1冊。 内容としてはこんな感じ。 「診断とは、疾患について、疾患をもつ個体について、さらに個体をつつむ環境について、必要なあらゆることを知り尽くそうとす…
昨日の産経のニュースから。 http://sankei.jp.msn.com/life/education/091106/edc0911060046000-n1.htm 鬱病休職の教職員に年間60億円の給与を支給 都教委が対策に本腰 2009.11.6 00:44 東京都の公立学校教職員のうち、精神系疾患で病気休暇を取得したり…
笠原嘉のうつ病に関する論文をまとめた本。1970年代からの論文が収録されているのですが、今読んでも新鮮なものが多いです。 この本の中でもっともボリュームがあるのが1975年に発表された木村敏との共著「うつ状態の臨床的分類に関する研究」。 ここ最近も…
テーマと装丁に惹かれて古本で手に入れた本ですが、これがなかなか面白い! 「顔」というものの性質や、その力を心理学的な研究に基づいて紹介した本で目次はこんな感じ。 1 外見で人を判断する2 顔にはなにがあるか 年齢を示唆する顔の手がかり 顔による…
http://d.hatena.ne.jp/morningrain/20090819/p1でもその内容をちょっと紹介した中井久夫『精神科医がものを書くとき』を読了。 解説が斎藤環で、そこで斎藤環は「中井先生はウルトラマンだ。精神医学にウルトラマンが来てくれて本当に幸運だった」という神…
今読んでいる中井久夫『精神科医がものを書くとき』の中の「統合失調症問答」より。 安全装置の発動として考えますと、こういう考えはどうでしょうか。私の友人の神田橋條治氏が、鬱病でいちばん辛いのは、いちばん得意な能力がいちばん低下したと感じること…
「あのさ。わたしはアルコールやいろんな薬物、たとえばコカインなんかをやる人を見たこともあるし、自分でも全部試したけど、自傷しているときのあんたほどハイになっている人を見たことはないね。気をつけな。いつか心臓麻痺か発作で死んでしまうよ。(28p)…
最近感じるのは、摂食障害を治療していくには私は歳をとりすぎたということである。何事にも旬の時期があることを感じる。私のそれは終った。(210p) これは「あとがき」に書かれている言葉ですが、この時、著者の松木邦裕は47歳。 その歳でこの言葉を言わし…
前のエントリーで紹介した小羽俊士『境界性パーソナリティ障害』に載っていたちょっと気になる話。 自殺や自殺関連行動の問題は、以前からうつ病などの関連で、精神医学の分野では大きな注目を集めていた。うつ病は自殺や自殺関連行動の大きなリスクにあるこ…