経済

ジェリー・Z・ミュラー『測りすぎ』

民間企業だけでなく、学校でも病院でも警察でも、そのパフォーマンスを上げるためにさまざまな指標が測定され、その指標に応じて報酬が上下し、出世が決まったりしています。 もちろん、こうしたことによってより良いパフォーマンスが期待されているわけです…

ダニ・ロドリック『貿易戦争の政治経済学』

『グローバリゼーション・パラドクス』で、グローバリゼーションのさらなる拡大(ハイパーグローバリゼーション)、国家主権、民主主義の三つのうち二つしか選び取ることができないとする考えを打ち出したトルコ生まれの経済学者の新著。 タイトルからはトラ…

ローレンス・サマーズ、ベン・バーナンキ、ポール・クルーグマン、アルヴィン・ハンセン著/山形浩生編訳『景気の回復が感じられないのはなぜか』

サマーズが口火を切り、バーナンキやクルーグマンとの間で2013〜15年にかけて行われた長期停滞論争を山形浩生が訳しまとめたもの。アルヴィン・ハンセンは1930年代に長期停滞という概念を提唱した経済学者で、この本にはその演説「経済の発展と人口増加の鈍…

ジョージ・ボージャス『移民の政治経済学』

近年は、移民への反発とそれを利用した「ポピュリズム」というものが世界の政治における1つのトレンドとなっています。 一方、日本では昨年、出入国管理法が改正され、政府は否定しているものの、外国人労働者の受け入れに大きくかじを切ったと見ていいでし…

フランチェスコ・グァラ『制度とはなにか』

著者はイタリアの哲学者で、以前に出した『科学哲学から見た実験経済学』が翻訳されています。昨年、『現代経済学』(中公新書)を出した経済学者の瀧澤弘和が監訳していますが、内容的には哲学の本と言っていいでしょう。 ただし、その内容は社会科学と密接…

加茂具樹・林載桓編『現代中国の政治制度』

著者の一人である梶谷懐氏よりご恵投いただきました。ありがとうございます。 本書はタイトルの通り、現代中国の政治制度についての本なのですが、特徴としては、確固たる「制度」が固まってない内容に見える中国の政治制度を、ピアソンの経路依存の考えを用…

 ケネス・シーヴ、 デイヴィッド・スタサヴェージ『金持ち課税』

帯に「民主主義は累進課税を選択しない。選択させたのは、戦争のみだった」との言葉がありますが、これは本書の主張を端的に表している言葉といえるでしょう。 20世紀の前半には累進課税が強化されて格差の縮小が見られたが、後半からは累進課税の弱まりによ…

 アマルティア・セン『アイデンティティと暴力』

少し前に読んだ本で感想を書きそこねていたのですが、これは良い本ですね。現代における理想主義の一つの完成形ともいえるような内容で、理想主義者はもちろん、理想主義を絵空事だとも思っている現実主義者の人も、ぜひ目を通して置くべき本だと思います。 …

 ブランコ・ミラノヴィッチ『不平等について』

副題は「経済学と統計が語る26の話」。グローバル経済における先進国の中間層の没落を「エレファントカーブ」と呼ばれるグラフで示し話題を読んだミラノヴィッチが、その前に書いた著作で、さまざまなトピックを通じて、単一のコミュニティ内の不平等、生ま…

 伊神満『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』

クリステンセンの書いたベストセラー『イノベーターのジレンマ』(邦訳のタイトルは『イノベーションのジレンマ』)は、イノベーションによって一時代を築いた企業が、なぜ次のイノベーションを起こせずに没落してしまうのかということを分析した本で、1997…

 トーマス・シェリング『紛争の戦略』

2005年にノーベル経済学賞を受賞したトーマス・シェリングの主著。シェリングはノーベル経済学賞を獲っているわけですが、この本が「ポリティカル・サイエンス・クラシックス」シリーズの1冊として刊行されていることからもわかるように、経済学という分野だ…

 神林龍『正規の世界・非正規の世界』

近年、論文が業績の中心となり、テクニカルな内容も増えている経済学の中で、「○○の世界」というタイトルの本はあまり見ないような気がします(社会学だとありそうですが)。 しかも、1972年生まれの著者にとってこれが初の単著。ずいぶん思い切ったタイトル…

 J・R・ヒックス『経済史の理論』(第6章の147ページまで)

けっこう前に読んで面白かった本ですが、その時は特にレビューなどを書いていませんでした。 今回、ちょっと読み直そうと思った+少しまとめる時間ができたので、ヒックス自身が「わたくしの著作のなかでも良い仕事の一つである」(「訳者あとがき」297p)と…

 足立啓二『専制国家史論』

中国社会を日本と対比させながら、中国の社会、政治、経済の特徴を鋭く抉り出した本として評判でありながら絶版で、古書の価格がびっくりするくらい高くなっていた本が、このたびちくま学芸文庫に入りました。 20年前の本で、前半はけっこう硬さも感じられて…

 清田耕造『日本の比較優位』

「比較優位」は高校の政治経済の教科書などにも登場する経済学の理論であり、提唱者のリカードとともにそれなりの知名度はあると思います。 しかし、一方で教科書の知識としては普及していても実際には理解されていない(現実の世界に当てはめられてない)理…

 井手英策・宇野重規・坂井豊貴・松沢裕作『大人のための社会科』

大人のための社会科の教科書といった体裁の本で企画自体は最近よくある気もしますが、この本は何よりも執筆者が豪華。『多数決を疑う』の坂井豊貴、『自由民権運動』の松沢裕作と、近年の新書の中でもトップクラスの本の著者が入っており、新書読みならば「…

 アマルティア・セン『正義のアイディア』

ノーベル経済学賞の受賞者で、狭い意味での経済分野にとどまらず政治哲学などの分野でも積極的な発言を行っているアマルティア・センの政治哲学分野における代表作。 とにかくセンの凄さを感じさせるのが冒頭の謝辞。ジョン・ロールズやケネス・アローからは…

 ダイアン・コイル『GDP』

サブタイトルは「<小さくて大きい数字>の歴史」。 現在、GDPほど注目されている数字はないかもしれませんし、例えばGDPの四半期の伸び率が0.1%なのか-0.1%なのかによって株式市場や為替市場は大きく動くでしょうし、選挙で与党が敗北する要因になるかも…

 山口一男『働き方の男女不平等』

シカゴ大学の社会学の教授であり、RIETIの客員研究員でもある著者が、日本の働き方における男女不平等に切り込んだ本。 計量分析をバリバリに活用した本で、ここで用いられている手法の解説やその是非についてはよくわからないところもあるのですが、さまざ…

 ジョージ・A・ アカロフ、ロバート・J・シラー『不道徳な見えざる手』

人間の持つ非合理性を経済学にと入り入れようとした『アニマルスピリット』の著者であるアカロフとシラーのコンビが、市場における詐欺的手法について分析しようとした本。 アカロフは情報の非対称性の研究で、シラーは投機的な市場の研究でノーベル経済学賞…

 マイケル・L・ロス『レント、レント・シージング、制度崩壊』

『石油の呪い』が面白かったマイケル・L・ロスが2001年に出した本の翻訳で、こちらは木材ブームとそれが制度にもたらす影響を分析しています。 原題は「TIMBER BOOMS AND INSTITUTIONAL BREAKDOWN」。それをレント・シーキングを研究する研究者たちが訳した…

 玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』

失業率は2%台に下がり(2017年4月で2.8%)、有効求人倍率も上がり、「バブル以来の人手不足」などという声もあがっていますが、それに反して賃金が上がっているという実感はないですし、実質賃金は上がっているどころか、むしろ低下の傾向も見られます。 こ…

 エステル・デュフロ『貧困と闘う知』

アビジット・V・バナジーとともに『貧乏人の経済学』を書き、マサチューセッツ工科大学でランダム化比較試験(RCT)の手法を駆使してさまざまな研究を行っているエステル・デュフロの著書が『貧乏人の経済学』と同じくみすず書房から登場。 ただし、訳者解説…

 中室牧子・津川友介『「原因と結果」の経済学』

何をもって「因果関係がある」と言えるのかを、近年の研究成果を交えながら明らかにした本。 こう書くと少し難しく感じますが、例えば次の3つの問を見てください。 メタボ健診を受けると長生きする テレビを見せると子どもの学力は下がる 偏差値の高い大学に…

 マイケル・L・ロス『石油の呪い』

サウジアラビアやUAEやクウェートやカタール、あるいはブルネイ、あるいはノルウェー、いずれも豊かな産油国であり、「それに比べて資源の乏しい日本では…」といった思いを抱きがちですが、経済学を少しかじったことのある人なら、石油の存在がかえって経済…

 トーマス・シェリング『ミクロ動機とマクロ行動』

2005年にノーベル経済学賞を受賞し、昨年の12月に95歳で亡くなったトーマス・シェリングの比較的一般向けに書かれた本。 ノーベル経済学賞を受賞したシェリングですが、経済学者というよりはゲーム理論の専門家と言うほうがその業績はわかりやすいかもしれま…

 カウシック・バスー『見えざる手をこえて』

タイトルや最初と最後だけを読めば、よくある主流派経済学批判なのですが、中で行われている議論は非常に面白い。 主流派経済学の方法論的個人主義を批判を行いながら、その方法論的個人主義を捨てたときに出現する厄介な問題にも目を配っており、社会科学に…

 鈴木亘『経済学者 日本の最貧困地域に挑む』

社会保障を専門とする経済学者の鈴木亘が、橋下市長のもとで大阪市の特別顧問となり、日本最大の日雇い市場がを抱えホームレスや生活保護受給者が集中する「あいりん地域」の改革にチャレンジした「戦い」の記録。 タイトルからすると、鈴木亘はあいりん地域…

 O・E・ウィリアムソン『市場と企業組織』

2009年にノーベル経済学賞をエリノア・オストロムとともに受賞したO・E・ウィリアムソンの主著。 さまざまなことが論じられている本ですが、とりあえずは制度派経済学の立場から、「なぜ、すべて市場で取引されるのではなく企業が生まれるのか? 逆になぜす…

 アルビン・E・ロス『Who Gets What (フー・ゲッツ・ホワット) 』

著者のアルビン・E・ロスは2012年にマーケットデザインの研究によってノーベル経済学賞を受賞した経済学者。この本は、その研究を一般向けに語ったものといえます。 経済学というと、需要、供給、そして価格が肝であり、需要と供給が価格によって調整される…