読書
小川哲の直木賞受賞作。満州がテーマになっているという点にも興味を持ち、文庫化したのをきっかけに読んでみました。 上・下巻、それぞれ350ページ以上ある大作ですが、非常に読みやすく、また、スケール感もあります。 出だしは、日露戦争前の高木という軍…
「日本一飛行機に乗っている研究者ではないか?」と思わせるほどの仕事をこなし、最近では地経学研究所の所長ともなっている著者が経団連で行った連続セミナーをもとにした本。 「地経学」とは耳慣れない言葉ですが、近年になって地政学の一分野として生まれ…
本書の出発点をなすのは、東ドイツの西ドイツへの適応ないし移行という当初の期待は、近年の展開に照らして幻影だったという所見である。〜「模倣の段階の終着点」にあって、東ドイツは消えてなくなるどころか、ますます見分けが可能である。(11p) 1990年…
日本の政治制度や政策についての本ですが、タイトルにあるように「数理とデータ」という角度から迫っている所に本書の特徴があります。 「数理とデータ」とあるように、データ分析だけではなく、ゲーム理論などの数理的な理論を使った分析がいくつかあるのも…
9月の半ばからえらく忙しくてかなり細切れに読んだために、本書の複雑な構成やイメージのつながりなどを十分に咀嚼しながら読めたわけではないのですが、これは印象に残る小説でした。 訳者は川野太郎で、明庭社というこの本が最初の出版になるのではないか…
なんといってもトランプが代表例ですが、近年の政治では政治経験がほとんどない、あるいはまったくない人物が大統領などの指導者の地位につくケースが増えています。 また、議院内閣制の国においても、新興政党が勢力を伸ばして無視しがたい勢力になっている…
20世紀屈指の長編の『砂時計』や「泣ける短編」として分画市場でも屈指の作品である「少年と犬」(『若き日の哀しみ』所収)を送り出したダニロ・キシュの連作短編集。 基本的には、20世紀前半に活動した共産主義者の悲劇的な運命を描いた話ですが、「犬と書…
「21世紀の日本政治」とはなかなか大きなタイトルですが、そこは『日本の地方政府』(中公新書)で日本の地方自治に関して新書サイズで濃密に分析してみせた著者であり、期待通りの読み応えのある分析がなされています。 副題は「グローバル化とデジタル化の…
現代の台湾を代表する作家である呉明益の長編。 今まで日本に紹介されてきた呉明益の作品は、最初の短編集『歩道橋の魔術師』を除くと、日本の植民地統治を含んだ歴史を取り入れた作品である『自転車泥棒』や『眠りの航路』、エコロジー的な視点から台湾の自…
アメリカといえば競争の国で、それがすぐれた製品やサービスを生み出していると考えられていますが、近年についてはそうでもないよ、ということを主張した本。 著者は「トマ」という名前からもわかるようにフランス人で(ピケティもトマ・ピケティ)、1999年…
前回紹介した『バベル』と同じく古沢嘉通が訳しているSFですが、同じSFでもその趣きはずいぶん違います。 『バベル』が歴史改変小説で舞台もアジアからイギリスまでの地理的に広い範囲でしたが、本書『レッドリバー・セブン:ワン・ミッション』は、途中まで…
Amazonに載っている紹介は以下のようなもの。 銀と、ふたつの言語における単語の意味のずれから生じる翻訳の魔法によって、大英帝国が世界の覇権を握る19世紀。英語とは大きく異なる言語を求めて広東(カントン)から連れてこられた中国人少年ロビンは、オッ…
人々は政治に対してどのような関心を持ち、多くの情報をどのように判断して、どのように行動(投票)するのか? こうしたことは昔から研究されてきましたが、近年ではその手法も洗練され、さまざまな研究が行われています。また、Brexitやトランプ大統領の誕…
著者の岡本信広先生より御恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 タイトルは長いですが、中国経済の概説書になります。 特徴は2つあって、まずタイトルの前半部分にある「人々の暮らしぶりから考える」という部分で、世代も性別も境遇も違う5人…
著者の五十嵐先生と編集部から御恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 副題は「統計分析が解明する移民・エスニックマイノリティに対する差別と排外主義」。本書は、この副題が表している通りの内容になります。 しかし、「差別」と「統計分析…
去年から読んでいる角田光代訳の『源氏物語』、今回読んだ第5巻と第6巻で光源氏が亡くなり、宇治十帖へと突入しました。 第5巻は「若菜 上」、「若菜 下」、「柏木」、「横笛」、「鈴虫」を収録、第6巻は「夕霧」、「御法」、「幻」、「雲隠」、「匂宮」、「…
石油は政治学においても注目されている資源で、マイケル・L・ロス『石油の呪い』は石油の存在が民主化の進展や女性の政治参加を阻害し、内戦などが起こりやすいことを明らかにしました。 これに対して本書が注目するのが植民地の独立と石油の関係です。 ブル…
日本国憲法の制定過程については、「押し付けか否か」という議論がずっとあり、近年でも「9条幣原発案説」(9条を提案したのが幣原喜重郎だという説)をめぐり議論があり、笠原十九司が幣原発案説を主張しているものの、多くの研究者がこれを否定する状況と…
著者のジン・クーユー(金刻羽)は1982年に北京で生まれ、現在はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで教鞭をとる経済学者で、専門は国際経済になります。 本書は、そうした経歴を持つ著者が中国経済の現状やその強み、問題点といったものを幅広く解説し…
買おうと思っていた本が本屋になくて、「何を読もうかな〜?」と思っていたところ、授業のプライバシーの権利で毎年のように話している三島由紀夫の『宴のあと』が目に入り、今回初めて読んでみました。 まず、感想としては単純に面白いですね。ジャンル的に…
『比較のなかの韓国政治』著者の浅羽先生と編集部から御恵贈いただきました。どうもありがとうございます。に引き続き、編者の浅羽先生と有斐閣の編集部から御恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 下にあげた本書の目次を最初から見ていくと、…
河出書房新社の「世界文学全集」シリーズに入っていた鴻巣友季子訳のものが新潮文庫から出たので読んでみました。 ウルフは前に『ダロウェイ夫人』(角川文庫、 富田彬訳)を読んだことがあったのですが、この『灯台へ』の方がぐっと面白く感じました。 『ダ…
適当なカテゴリーがなかったので「社会学」カテゴリーにしてしまいましたけど、本書は長年心理カウンセラーを務めてきた著者が、大学で人類学を勉強しなおし、基隆港の港湾労働者の生活をフィールドワークしたものをまとめたものが本書になります。 実は基隆…
著者の浅羽先生と編集部から御恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 本書の「あとがき」の日付は2024年10月21日となっていますが、まさかここまでタイムリーな本になるとは関係者も思わなかったのではないでしょうか。韓国政治は2024年12月3日…
今年も去年に引き続き、本を読むペースはまあまあでしたが、ブログは書けなかった。 とりあえず、ちょっと前に読了した斎藤環『イルカと否定神学』の感想が書けてないですし、その他中古で買った本は紹介しきれませんでした(先日読み終わったばかりの浅羽祐…
『スペシャリストの帽子』や『マジック・フォー・ビギナーズ』などの作品で知られるケリー・リンクの短編集。すべて童話などを下敷きにした作品になります。ケリー・リンクには「雪の女王」を下敷きにした「雪の女王と旅して」(『スペシャリストの帽子』所…
副題は「その言説に根拠はあるのか」。税制をめぐるもっともらしい言説を実際のデータで検証しようとした本になります。 冒頭はいわゆる「年収の壁」をとり上げていて非常にタイムリー。「働き控え」をしている人にはぜひ読んでほしいですし、同時にあまりに…
2021年に行われた衆議院議員選挙、立憲民主党が共産党と選挙協力を行い自民党を追い詰めるのでは? という観測もありましたが、結果は自公の勝利に終わりました。「なぜ、野党は勝てないのか?」と思った人も多かったでしょう。 本書はそんな中で、改めて「…
夏に1巻と2巻を読んだ角田光代訳の源氏物語。引き続いて3巻と4巻を読んでみました。 第3巻は「澪標」、「蓬生」、「関屋」、「絵合」、「松風」、「薄雲」、「朝顔」、「少女」、「玉鬘」。第4巻が「初音」、「胡蝶」、「蛍」、「常夏」、「篝火」、「野分」…
社会的にも政治的にも日本で最も大きな影響力を有していると思われる宗教団体の創価学会について、カナダに生まれ、現在はアメリカのノースカロライナ州立大学の哲学・宗教学部教授を務める人物が論じた本。 副題は「現代日本の模倣国家」で、創価学会をミニ…