ジョナサン・フランゼン『コレクションズ』

『フリーダム』がとても面白かったアメリカの作家ジョナサン・フランゼンの長編小説になります。『フリーダム』が2009年発表の第4長編、この『コレクションズ』は2001年発表の第3長編です。 まずタイトルの「コレクションズ」ですが「Collections」ではなく…

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

『若草物語』は未読なのですが、2018年の個人的ベスト映画『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督+主演シアーシャ・ローナンということで見てきましたが、これも良い作品でしたね。 舞台は南北戦争当時のアメリカ・マサチューセッツ。メグ、ジョー、リ…

田野大輔『ファシズムの教室』

長年、大学で「ファシズムの体験授業」を行っていた著者による授業実践の記録になります。履修している学生たちに、白いシャツを着せ、「ハイル、タノ!」と叫ばせ、キャンパスにいるリア充(サクラ)を糾弾するというユニークでインパクトのある授業はWeb記…

Badly Drawn Boy / Banana Skin Shoes

CD

Badly Drawn Boy、その名前に懐かしさを感じる人もけっこういるかもしれません。 U.N.K.L.E.の「Psyence Fiction」にトム・ヨークやリチャード・アシュクロフトらとともにゲストとして参加して"Nursery Rhyme Breather"で鮮烈な印象を残し、2000年の1stアル…

伊藤修一郎『政策実施の組織とガバナンス』

副題は「広告景観規制をめぐる政策リサーチ」。タイトルと副題からは面白さは感じられないかもしれまえんが、「なぜ守られないルールがあるのか?」「なぜ政策は失敗するのか?」といった問いに変形すると、ちょっと興味が湧いてくるかもしません。 そして、…

Car Seat Headrest / Making a Door Less Open

CD

一昨年でたアルバム「Twin Fantasy」が非常に良かったCar Seat Headrestの新作。Car Seat Headrestはシアトルのアーティスト、ウィル・トレドによるプロジェクトで、バンド編成になってからはこれが3枚目になるのだと思います。 「Twin Fantasy」は10分超え…

酒井正『日本のセーフティーネット格差』

副題は「労働市場の変容と社会保険」。この書名と副題から「非正規雇用が増える中で社会保険がセーフティーネットの役割を果たせなくなってきたことを指摘している本なのだな」と想像する人も多いでしょう。 これは間違いではないのですが、本書は多くの人の…

ケン・リュウ編『月の光』

『折りたたみ北京』につづく、ケン・リュウ編の現代中国SFアンソロジーの第2弾。2段組で500ページ近くあり、しかもSF作品だけでなく、現在の中国のSFの状況を伝えるエッセイなども収録されており、盛りだくさんの内容となっています。 まず、多くの人にとっ…

宮本浩次 / 宮本、独歩。

CD

けっこう前にNHKの「うたコン」で聴いた"冬の花"が良かったこともあってアルバムを買いましたが、やはりなかなかいいですね。 このアルバムの魅力は何と言っても宮本浩次の歌唱力。エレファントカシマシ時代から良かったわけですけど、このソロアルバムでは…

谷口将紀『現代日本の代表制民主政治』

本書では1ページ目にいきなり下のようなグラフが掲げられており、「この図が、本書の到達点、そして出発点である」(2p)と述べられています。 グラフのちょうど真ん中の山が有権者の左右イデオロギーの分布、少し右にある山が衆議院議員の分布、そしてその…

陳楸帆『荒潮』

劉慈欣『三体』を筆頭に近年盛り上がりを見せている中華SFですが、この作品もその1つ。著者はチェン・チウファンと読みます(英名はスタンリー・チェン)。すでにケン・リュウ編『折りたたみ北京』を読んだ人は、そこに「鼠年」、「麗江の魚」、「沙嘴の花」…

ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン『自由の命運』

『国家はなぜ衰退するのか』のコンビが再び放つ大作本。「なぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか?」という問題について、さまざまな地域の歴史を紐解きながら考察しています。 と、ここまで聞くと前著を読んだ人は「『国家はなぜ衰退するのか』もそういう話…

Ásgeir / Bury The Moon

CD

アイスランド出身のシンガーソングライターÁsgeirの3rdアルバム。 前作の「Afterglow」は曲調が広がったぶん、Ásgeirらしい浮遊感のようなものが後退してしまっていて、何回か聴くにつれ「やっぱ1stの「In the Silence」のほうが良かったなあ」などと思って…

外山文子『タイ民主化と憲法改革』

ここ数年、欧米ではポピュリズムの嵐が吹き荒れています。「ポピュリズム」がいかなるものかということに関してさまざまな議論がありますが、「法の支配」や「司法の独立」といった概念への攻撃がその特徴としてあげられることがあります。 これはリベラル・…

Olivia Henry / Expectations

CD

日本語の情報があまりないので詳しいプロフィールはわからないのですが、ロサンゼルスで活動しているシンガーで、ちょっとジャズっぽさも入ったオルタナポップという感じでしょうか。公式ページの紹介ではFlorence & The MachineやAmy Winehouseが引き合いに…

パク・ミンギュ『短篇集ダブル サイドB』

先日紹介したパク・ミンギュ『短篇集ダブル サイドA』に引き続き、もう1冊の『サイドB』も読んでみました。 morningrain.hatenablog.com 『サイドA』はリアリズムから不条理系のSFまで、とにかくパク・ミンギュの引き出しの広さに驚かされましたが、この『サ…

『レ・ミゼラブル』

ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』の舞台ともなったパリ郊外のモンフェルメイユを舞台にした映画で、タイトルはそこから。ミュージカル映画ではありません。 このモンフェルメイユ、「郊外」というキーワードからピンときた人もいるかも知れませんが、…

木下衆『家族はなぜ介護してしまうのか』

「家族はなぜ介護してしまうのか」、なんとも興味をそそるタイトルですが、本書は、認知症患者のケアにおける家族の特権的な立場と、それゆえに介護専門職というプロがいながら、家族が介護の中心にならざるを得ない状況を社会学者が解き明かした本になりま…

『名もなき生涯』

テレンス・マリックがオーストリア出身で第二次世界大戦中に良心的兵役拒否を行ったフランツ・イエーガーシュテッターについて描いた映画。自分はこの映画までイエーガーシュテッターのことを知りませんでしたけど、殉教者としてカトリック教会から列福され…

佐藤卓己『『キング』の時代』

『キング』というと関東大震災以後の大衆文化を代表するものとして日本史の教科書にも登場しています。ただし、100万部を売ったということが紹介されているだけど、その具体的な中身や人気の秘訣については知らない人も多いと思います。 そんな『キング』に…

ルーシャス・シェパード『タボリンの鱗』

一昨年に刊行されて面白かった『竜のグリオールに絵を描いた男』と同じく、全長1マイルにも及ぶ巨竜グリオールを舞台にした連作の続編。今作では「タボリンの鱗」と「スカル」の2篇を収録しており、どちらも中篇といっていいボリュームです。 グリオールは魔…

Oh Wonder / No One Else Can Wear Your Crown

CD

ロンドンを中心に活動する男女デュオ・Oh Wonderの3rdアルバム。前作の「Ultralife」から聞き始めましたが、男女のツインボーカルのエレポップということで、個人的には非常に好きなタイプのアーティストです。 今作は前作に比べると少し落ち着いた感じで、…

『1917 命をかけた伝令』

サム・メンデス監督作品で、第一次世界大戦の西部戦線を舞台に、前線の部隊に攻撃中止の命令を伝える伝令の体験を描いた映画。まるで、前編ワンカットで撮影したように構成されていて(途中で暗転するシーンもあるので相当な長回しをつないでいるのだと思い…

『フォードvsフェラーリ』

終わってしまうギリギリで見てきましたが、これはハリウッドの王道映画とも言える作品ですね。 ル・マン24時間レースで優勝したものの心臓病でレーサーを引退したキャロル・シェルビー(マッド・デイモン)と、偏屈でありながら車の特徴を見抜く目とドライバ…

エリック・A・ポズナー/E・グレン・ワイル『ラディカル・マーケット』

「市場こそが社会を効率化するもので、できるだけ市場原理を導入すべきだ」という考えは、いわゆる新自由主義の潮流の中でたびたび主張されており、特に目新しい提案ではないです。 では、この本は何が目新しいのか、何がラディカルなのかというと、私有財産…

パク・ミンギュ『短篇集ダブル サイドA』

『ピンポン』や『三美スーパースターズ』という2冊の長編が非常に面白かったパク・ミンギュの短編集。この短編集は2枚組のアルバムを意識しており、『サイドA』と『サイドB』が同時に発売されていますが、とりあえず『サイドA』から読んでみました。 収録さ…

『リチャード・ジュエル』

一言で言えば非常に「反時代的」な映画。基本的には、イーストウッドがここ最近好んで取り上げる、「無名の人の行った英雄的行為」を描いたもの。アトランタオリンピックの開催中に起きた爆弾テロ事件において、爆弾をいち早く発見し、被害の拡大を防いだリ…

2010年代、社会科学の10冊

2010年代になって自分の読書傾向は、完全に哲学・思想、心理、社会、歴史といった人文科学から政治、経済などの社会科学に移りました。その中でいろいろな面白い本に出会うことができたわけですが、基本的に社会科学の本、特に専門書はあまり知られていない…

『ラストレター』

岩井俊二監督作品。とりあえず、映画.COMに載っているあらすじは次のようなもの。 姉・未咲の葬儀に参列した裕里は、未咲の娘・鮎美から、未咲宛ての同窓会の案内状と未咲が鮎美に遺した手紙の存在を告げられる。未咲の死を知らせるため同窓会へ行く裕里だっ…

Hello Saferide / The Fox, the Hunter and Hello Saferide

00年代最高のポップソング"2006"を世に送り出したHello Saferideの3rdアルバム。ただし、このアルバムは2014年、今から6年前にリリースされています。 大好きだったのになんで気づかなかったというと、2ndから6年空いたのと、Amazonで取り扱っていなかったか…