金井郁・申琪榮『「生保レディ」の現代史』(名古屋大学出版会)

日本は世界有数の生命保険大国であり、2024年の時点で世帯加入率は89.4%もあると言われています。これを支えたのがいわゆる「生保レディ」と呼ばれる女性の営業職員です。 80年代には男性営業職を導入した後発型の生保も登場しますが、伝統的生保会社では今…

2025年の紅白歌合戦を振り返る

TV

あけましておめでとうございます。 今年の紅白歌合戦は大トリのミセスのあとに松田聖子が登場するという明らかに変な構成でしたが、これは直前まで嵐に出演交渉をしていて、ミセスにも「トリですが嵐がその後に入るかもしれません」という話はしていたんでし…

2025年ベストアルバム

CD

「ベストアルバム」を選べるほど聴いていないですし、去年の途中からアルバム評をこのブログに書くことも止めてしまったわけですが、惰性で3枚だけあげておきます。 DOUBLE INFINITY (輸入盤) アーティスト:BIG THIEF 4ad Amazon ここ最近、ずっと素晴らしい…

2025年の映画

改めて「映画」のタグを見てみたら、本当に全然見ていない。ブログに感想を書いているのは6本しかない。 他にも子どもと『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』とか『野生の島のロズ』とか『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサ…

2025年の本

ここ最近、読めたけどブログが書ききれなかったという年が多かったですが、今年は4月以降に一気に仕事が忙しくなった影響で、読む速度も大幅に鈍化。そして、当然のようにブログも書けなくなったので、後半は章ごとのまとめをTwitterにあげて、それをまとめ…

上川龍之進『消費税と政治』(有斐閣)

編集部からご恵投いただきました。どうもありがとうございます。 本書の序章で出される問いは、「なぜ増税、とくに消費税の増税は不人気な政策なのに、それに取り組む首相がいるのか?」というものです。 今までのよくある問いは「日本ではなぜ財政再建が進…

『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』

ようやく見てきましたが、前作に引き続きとにかく動きの良いアニメ。冒頭の寺院の襲撃シーンから、絵の動かし方やカット割りに溢れんばかりのセンスがある。 寺院襲撃シーンの赤外線カメラ(?)の絵とかは、それこそ押井守作品とかを思い起こさせるけど、そ…

小川哲『地図と拳』(集英社文庫)

小川哲の直木賞受賞作。満州がテーマになっているという点にも興味を持ち、文庫化したのをきっかけに読んでみました。 上・下巻、それぞれ350ページ以上ある大作ですが、非常に読みやすく、また、スケール感もあります。 出だしは、日露戦争前の高木という軍…

鈴木一人『地経学とは何か』(新潮社)

「日本一飛行機に乗っている研究者ではないか?」と思わせるほどの仕事をこなし、最近では地経学研究所の所長ともなっている著者が経団連で行った連続セミナーをもとにした本。 「地経学」とは耳慣れない言葉ですが、近年になって地政学の一分野として生まれ…

『果てしなきスカーレット』

評判悪いですが見てきました。 まず、今の日本でこんなにリッチな画をつくれる映画監督は細田守しかいないし、スカーレットのキャラも日本のアニメ映画にはない華があっていい。 おそらく最初の荒野のシーンはドゥニ・ヴィルヌーヴの『DUNE/砂の惑星』を参…

シュテッフェン・マウ『統一後のドイツ』(白水社)

本書の出発点をなすのは、東ドイツの西ドイツへの適応ないし移行という当初の期待は、近年の展開に照らして幻影だったという所見である。〜「模倣の段階の終着点」にあって、東ドイツは消えてなくなるどころか、ますます見分けが可能である。(11p) 1990年…

浅古泰史+善教将大編著『数理とデータで読み解く日本政治』(日本評論社)

日本の政治制度や政策についての本ですが、タイトルにあるように「数理とデータ」という角度から迫っている所に本書の特徴があります。 「数理とデータ」とあるように、データ分析だけではなく、ゲーム理論などの数理的な理論を使った分析がいくつかあるのも…

ベン・ラーナー『トピーカ・スクール』(明庭社)

9月の半ばからえらく忙しくてかなり細切れに読んだために、本書の複雑な構成やイメージのつながりなどを十分に咀嚼しながら読めたわけではないのですが、これは印象に残る小説でした。 訳者は川野太郎で、明庭社というこの本が最初の出版になるのではないか…

水島治郎編『アウトサイダー・ポリティクス』(岩波書店)

なんといってもトランプが代表例ですが、近年の政治では政治経験がほとんどない、あるいはまったくない人物が大統領などの指導者の地位につくケースが増えています。 また、議院内閣制の国においても、新興政党が勢力を伸ばして無視しがたい勢力になっている…

『遠い山なみの光』

カズオ・イシグロの小説を映画化した作品。 1982年のイギリスと1952年の長崎を行き来するような形で進むストーリーで、82年に娘のニキが長崎からイギリスに移り住んだ母の悦子の過去を聞くという形で話が進んでいきます。 1952年の長崎は、朝鮮戦争の特需も…

ダニロ・キシュ『ボリス・ダヴィドヴィチのための墓』(松籟社)

20世紀屈指の長編の『砂時計』や「泣ける短編」として分画市場でも屈指の作品である「少年と犬」(『若き日の哀しみ』所収)を送り出したダニロ・キシュの連作短編集。 基本的には、20世紀前半に活動した共産主義者の悲劇的な運命を描いた話ですが、「犬と書…

曽我謙悟『21世紀の日本政治』

「21世紀の日本政治」とはなかなか大きなタイトルですが、そこは『日本の地方政府』(中公新書)で日本の地方自治に関して新書サイズで濃密に分析してみせた著者であり、期待通りの読み応えのある分析がなされています。 副題は「グローバル化とデジタル化の…

『国宝』

ようやく見てきました。 「役者に演技をさせる」という点では李相日監督は今の現役の監督の中ではピカイチという感じですが、今回も役者の演技は素晴らしいです。 吉沢亮と横浜流星はともに期待以上の演技でしたし、吉沢亮の美形っぷりも際立ってました。渡…

呉明益『海風クラブ』(KADOKAWA)

現代の台湾を代表する作家である呉明益の長編。 今まで日本に紹介されてきた呉明益の作品は、最初の短編集『歩道橋の魔術師』を除くと、日本の植民地統治を含んだ歴史を取り入れた作品である『自転車泥棒』や『眠りの航路』、エコロジー的な視点から台湾の自…

トマ・フィリポン『競争なきアメリカ』(みすず書房)

アメリカといえば競争の国で、それがすぐれた製品やサービスを生み出していると考えられていますが、近年についてはそうでもないよ、ということを主張した本。 著者は「トマ」という名前からもわかるようにフランス人で(ピケティもトマ・ピケティ)、1999年…

A・J・ライアン『レッドリバー・セブン:ワン・ミッション』

前回紹介した『バベル』と同じく古沢嘉通が訳しているSFですが、同じSFでもその趣きはずいぶん違います。 『バベル』が歴史改変小説で舞台もアジアからイギリスまでの地理的に広い範囲でしたが、本書『レッドリバー・セブン:ワン・ミッション』は、途中まで…

R・F・クァン『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』(東京創元社)

Amazonに載っている紹介は以下のようなもの。 銀と、ふたつの言語における単語の意味のずれから生じる翻訳の魔法によって、大英帝国が世界の覇権を握る19世紀。英語とは大きく異なる言語を求めて広東(カントン)から連れてこられた中国人少年ロビンは、オッ…

善教将大編『政治意識研究の最前線』(法律文化社)

人々は政治に対してどのような関心を持ち、多くの情報をどのように判断して、どのように行動(投票)するのか? こうしたことは昔から研究されてきましたが、近年ではその手法も洗練され、さまざまな研究が行われています。また、Brexitやトランプ大統領の誕…

岡本信広『人々の暮らしぶりから考える 中国経済はどこまで独特か?』(白桃書房)

著者の岡本信広先生より御恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 タイトルは長いですが、中国経済の概説書になります。 特徴は2つあって、まずタイトルの前半部分にある「人々の暮らしぶりから考える」という部分で、世代も性別も境遇も違う5人…

五十嵐彰『可視化される差別』(新泉社)

著者の五十嵐先生と編集部から御恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 副題は「統計分析が解明する移民・エスニックマイノリティに対する差別と排外主義」。本書は、この副題が表している通りの内容になります。 しかし、「差別」と「統計分析…

角田光代訳『源氏物語5・6』

去年から読んでいる角田光代訳の『源氏物語』、今回読んだ第5巻と第6巻で光源氏が亡くなり、宇治十帖へと突入しました。 第5巻は「若菜 上」、「若菜 下」、「柏木」、「横笛」、「鈴虫」を収録、第6巻は「夕霧」、「御法」、「幻」、「雲隠」、「匂宮」、「…

向山直佑『石油が国家を作るとき』

石油は政治学においても注目されている資源で、マイケル・L・ロス『石油の呪い』は石油の存在が民主化の進展や女性の政治参加を阻害し、内戦などが起こりやすいことを明らかにしました。 これに対して本書が注目するのが植民地の独立と石油の関係です。 ブル…

小宮京『昭和天皇の敗北』

日本国憲法の制定過程については、「押し付けか否か」という議論がずっとあり、近年でも「9条幣原発案説」(9条を提案したのが幣原喜重郎だという説)をめぐり議論があり、笠原十九司が幣原発案説を主張しているものの、多くの研究者がこれを否定する状況と…

『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』

ボブ・ディランをティモシー・シャラメが演じている映画。 この手のミュージシャンの映画は、まず音楽にハズレがなくて音楽を楽しめますし、今作ではティモシー・シャラメが相変わらずのカリスマ性を発揮している+実際に歌も歌っててそれも良いということで…

ジン・クーユー『新中国経済大全』

著者のジン・クーユー(金刻羽)は1982年に北京で生まれ、現在はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで教鞭をとる経済学者で、専門は国際経済になります。 本書は、そうした経歴を持つ著者が中国経済の現状やその強み、問題点といったものを幅広く解説し…