小川有美(編)宮本太郎・水島治郎・網谷龍介・杉田敦(著)『社会のためのデモクラシー』

副題は「ヨーロッパの社会民主主義と福祉国家」。なかなか豪華な執筆陣が並んでいる本ですが、篠原一が中心メンバーとなって始めたかわさき市民アカデミーで2014年に行われた講義をまとめたものになります。 かわさき市民アカデミーが発行者となっているから…

松尾隆佑『ポスト政治の政治理論』

面白く読みましたが、なかなか紹介の難しい本でもあります。 まず、タイトルを見ても中身がわからない。これが「ポスト代議制の政治理論」とかであれば、「ああ、直接民主制その他を語った本なのか」と想像がつきますが、「ポスト政治」という言葉は一般の人…

『カツベン!』

この正月に知り合いからチケットをもらったので見に行こうと思ったら、立川は夜遅くの回しかなく、昭島Movixまで行って見てきました。日曜なので観客は15人もいないくらいでけっこう厳しいですね。 監督は周防正行。無声映画の活動弁士を描いたコメディ映画…

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

別にスター・ウォーズのファンというわけではないので見るのが遅れましたが、なんだかんだ言って今まで全部見てきているので(エピソード4と5はTV)、完結編も見ておこうということで見に行ってきました。 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』よりは面白か…

テッド・チャン『息吹』

テッド・チャンの『あなたの人生の物語』以来17年ぶりの作品集。 すでに各所方面で絶賛されているので改めて詳しく書く必要もないかと思うほどですが、やはりテッド・チャンは優れた作家だと認識させられる作品集です。 前作の『あなたの人生の物語』に比べ…

2019年の紅白歌合戦を振り返る

TV

あけましておめでとうございます。 もはやこのブログの儀式とも言える年初の紅白振り返りです。 今年も一昨年と同じく国民的なヒット曲が1曲もないという紅白スタッフにとっては危機的な状況。そんな中で取られた作戦は、とりあえずラグビーと東京オリンピッ…

2019年ベストアルバム

CD

今年はあんまり新しいバンドなどを発見できずで5枚だけ。 今年は洋楽はBig Thiefの年だったのではないかと。2枚組とか2枚同時発売とかは基本的に地雷だと思うのですが、Big Thiefは1年に2枚出していずれもクオリティが高いというなかなかできないことをやっ…

Michael Kiwanuka / KIWANUKAとKanye West / JESUS IS KING

CD

まずはMichael Kiwanuka / KIWANUKA。 2016年のベスト1にこのMichael Kiwanukaの「Love & Hate」をあげたことからも、今作も非常に期待して、早くからAmazonでCDを予約していました。 が、届かない…。 結局、12/24のクリスマス・イブまでまってAmazonから注…

2019年の映画

去年に引き続き映画館で見た映画は13本。立川シネマシティ以外で2本見たというのが去年に比べると進歩と言えるかもしれない。その程度の映画熱ですが、毎年恒例でもあるのでベスト5を紹介します。 1位 『運び屋』 まあ、自分はイーストウッド大好き人間なの…

2019年の本

毎年恒例のエントリー。今年はまず小説以外の本(と言ってもほぼ社会科学の本ですが)を読んだ順で9冊紹介します。 小説に関しては去年は順位をつけませんでしたが、今年は順位をつけて5冊紹介します。 ちなみに新書のほうは以下に今年のベストをまとめてあ…

『家族を想うとき』

ケン・ローチがフランチャイズの宅配ドライバーのリッキーとその家族を描いたドラマ。見る前は邦題がダサいと思いましたが、見終わってみるとこれでいいのかもしれません。見た後にずっしりとしたものを残す社会派ドラマとなっています。 映画はリッキーが宅…

ジャスティン・ゲスト『新たなマイノリティの誕生』

2016年に大西洋を挟んで起きたイギリスのBrexitとアメリカの大統領選でのトランプの当選は世界に大きな衝撃を与え、この2つの事柄が起きた背景や原因を探る本が数多く出されました。 本書もそうした本の1つなのですが、何といっても本書の強みは2016年以前か…

神林長平『いま集合的無意識を、』

この前読んだ『絞首台の黙示録』が非常に奇妙で面白かったので、神林長平の2012年に出版された短編集を読んでみました。 なんといっても注目を集めるのが、パソコンの画面に伊藤計劃を名乗る文字列が現れて神林長平本人らしき作家と対話を行う表題作の「いま…

小沢健二 / So kakkoii 宇宙

CD

いきなり、♪そして時は2020 全力疾走してきたよね/1995年冬は長くって寒くて 心凍えそうだったよね♪と強烈に90年代を思い起こさせる出だしで始まるアルバムですが、やはり90年代を強烈に意識させ、蘇らせるアルバムですね。 そんな中で個人的に一番響いたの…

田中(坂部)有佳子『なぜ民主化が暴力を生むのか』

紛争が終結して、新しい国づくりを始めてそのために選挙も行ったのに、再び政事的暴力が噴出してしまう。これはよくあるパターンだと思います。近年だと南スーダンがそうでした。PKOで派遣されていた自衛隊が武力衝突に巻き込まれそうになっていたのは記憶に…

『ジョーカー』

ようやく見てきました。 評判通りホアキン・フェニックスの怪演はさすがで、まずその演技に惹きつけられました。主人公のアーサーのちょっとずれたようなダンスも印象的で、主演の存在感が際立った映画だったと思います。 これだけ公開から時間が経つとだい…

スティーヴン・クレイン『勇気の赤い勲章』

1895年に発表された南北戦争を舞台にした戦争小説。ヘミングウェイも激賞している小説で、解説で訳者の藤井光が「二十世紀の大半を通じて、さらには今世紀に至るまでのアメリカ文学における戦争小説のひとつの「型」は、クレインのこの小説によって完成した…

Longwave / If We Ever Live Forever

CD

Longwave、11年ぶり5枚目のアルバムということでいいのかな? とっくに解散してしまったと思っていたLongwaveですが、なぜか復活しました。 メジャーデビュー作の2ndアルバムはデイヴ・フリッドマンがプロデュースしており、その後に出されたEPの「Life of t…

猪俣哲史『グローバル・バリューチェーン』

本書の冒頭にある問いは「iPhoneはメイド・インどこか?」というものです。USAでしょうか? チャイナでしょうか? それとも別の国でしょうか? 正解は「Designed by Apple in Califoronia, Assembled in China.」というものです。 iPhoneは一つの典型的な例…

神林長平『絞首台の黙示録』

前々から神林長平の作品を読んでおきたいなと思っていたのですが、たまたま手にとった本書の解説が東浩紀で、面白そうだったので読んでみました。 そしたら、面白い! とにかくすごく変な小説で、奇想と言ってもいいかも知れません。国書刊行会がマイナーで…

Big Thief / Two Hands

CD

今年、3rdアルバムの「U.F.O.F.」をリリースしたばかりのBig Thiefのニューアルバムが早くも登場。 ここまでリリース間隔が短いと「B面的な曲」を集めたようなアルバムかと想像しますが、「U.F.O.F.」よりもむしろ派手で、一般受けするアルバムに仕上がって…

ポール・コリアー『エクソダス』

『最底辺の10億人』、『民主主義がアフリカ経済を殺す』などの著作で知られる開発経済学者のポール・コリアーが移民について論じた本。 トランプ大統領の誕生にBrexitと、移民の問題がクローズアップされる機会が続きましたが、この本の原書が出たのは2013年…

マイケル・オンダーチェ『戦下の淡き光』

1945年、うちの両親は、犯罪者かもしれない男ふたりの手に僕らをゆだねて姿を消した。 これがこの小説の冒頭の一文です。この一文からもわかるようにオンダーチェの新作は非常にミステリーの要素が強いです。読み始めたときは、まずカズオ・イシグロの『わた…

『ホテル・ムンバイ』

タイトルから「『ホテル・ルワンダ』のようなヒューマンドラマなのかな〜?」くらいにしか思っていなかったのですが、TwitterのTLで「傑作!」との声を聞いて見に行ってみたんですけど、確かにこれは面白い!近年でも出色の緊迫感を持った映画です。 題材は2…

帶谷俊輔『国際連盟』

副題は「国際機構の普遍性と地域性」。国際連盟の抱えていた問題を、第一次世界大戦後の中国に対する連盟のスタンスや、南米のチャコ紛争に対する連盟の関わりなどから探ろうとした本になります。 国際連盟というと「失敗だった」というイメージが強いと思い…

ピョン・ヘヨン『モンスーン』

白水社の<エクス・リブリス>シリーズの1冊ですが、<エクス・リブリス>でも前回配本がハン・ガン『回復する人間』で今作も韓国の女性作家の短篇集。韓国文学は本当に勢いがありますね。 ハン・ガンと同じく、この『モンスーン』の作者のピョン・ヘヨンも1…

Common / Let Love

CD

Commonの12枚目のアルバム。相変わらずの安定感という感じで、気持ちよく聴ける1枚に仕上がっています。 前作の「Black America Again」は、トランプ政権の誕生を受けて、それに対するプロテストというイメージも強かったですが、今回はアルバムタイトルに「…

マンサー・オルソン『集合行為論』

集団と集合財(公共財)の関係を論じた古典的著作。やはり読んでおくべきかと思って読んでみました。 ただ、O・E・ウィリアムソン『市場と企業組織』を読んだときにも思いましたけど、完全に古典というわけでもない少し古めの本を読むと、文脈や著者は想定し…

ハン・ガン『回復する人間』

ほとんどの人たちは一生のあいだ、色や形を大きく変えずに生きていく。けれどもある人たちは何度にも渡って自分の体を取り替える。(「エウロパ」87p) もちろんあたしはまだ人が信じられないし、この世界も信じていないよ。だけど、自分自身を信じないこと…

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

仕事が急遽休みになったので見てきました。 タランティーノ監督の新作は、1969年に起きたロマン・ポランスキーの妻であり女優でもあったシャロン・テートがカルト集団チャールズ・マンソン・ファミリーに殺害された事件をモチーフにした作品。 主人公のリッ…