政治

小川有美(編)宮本太郎・水島治郎・網谷龍介・杉田敦(著)『社会のためのデモクラシー』

副題は「ヨーロッパの社会民主主義と福祉国家」。なかなか豪華な執筆陣が並んでいる本ですが、篠原一が中心メンバーとなって始めたかわさき市民アカデミーで2014年に行われた講義をまとめたものになります。 かわさき市民アカデミーが発行者となっているから…

松尾隆佑『ポスト政治の政治理論』

面白く読みましたが、なかなか紹介の難しい本でもあります。 まず、タイトルを見ても中身がわからない。これが「ポスト代議制の政治理論」とかであれば、「ああ、直接民主制その他を語った本なのか」と想像がつきますが、「ポスト政治」という言葉は一般の人…

ジャスティン・ゲスト『新たなマイノリティの誕生』

2016年に大西洋を挟んで起きたイギリスのBrexitとアメリカの大統領選でのトランプの当選は世界に大きな衝撃を与え、この2つの事柄が起きた背景や原因を探る本が数多く出されました。 本書もそうした本の1つなのですが、何といっても本書の強みは2016年以前か…

田中(坂部)有佳子『なぜ民主化が暴力を生むのか』

紛争が終結して、新しい国づくりを始めてそのために選挙も行ったのに、再び政事的暴力が噴出してしまう。これはよくあるパターンだと思います。近年だと南スーダンがそうでした。PKOで派遣されていた自衛隊が武力衝突に巻き込まれそうになっていたのは記憶に…

ポール・コリアー『エクソダス』

『最底辺の10億人』、『民主主義がアフリカ経済を殺す』などの著作で知られる開発経済学者のポール・コリアーが移民について論じた本。 トランプ大統領の誕生にBrexitと、移民の問題がクローズアップされる機会が続きましたが、この本の原書が出たのは2013年…

帶谷俊輔『国際連盟』

副題は「国際機構の普遍性と地域性」。国際連盟の抱えていた問題を、第一次世界大戦後の中国に対する連盟のスタンスや、南米のチャコ紛争に対する連盟の関わりなどから探ろうとした本になります。 国際連盟というと「失敗だった」というイメージが強いと思い…

マンサー・オルソン『集合行為論』

集団と集合財(公共財)の関係を論じた古典的著作。やはり読んでおくべきかと思って読んでみました。 ただ、O・E・ウィリアムソン『市場と企業組織』を読んだときにも思いましたけど、完全に古典というわけでもない少し古めの本を読むと、文脈や著者は想定し…

ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』 

それぞれ数多くの論文を発表し高い評価を得ているアセモグルとロビンソンが「経済成長はどのような条件で起こるのか?」という大テーマについて論じた本。読もうと思いつつも今まで手が伸びていなかったのですが、授業でこの本と似たようなテーマを扱うこと…

ロナルド・イングルハート『文化的進化論』

『静かなる革命』、『カルチャーシフトと政治変動』といった著作で、20世紀後半の先進国では物質主義的価値観から脱物質主義的価値観へのシフトが起こったということを主張したイングルハートが2018年に出版した著作の翻訳。 この理論自体はすでに広く知られ…

北岡伸一『世界地図を読み直す』

副題が「協力と均衡の地政学」となっているので、著者流の国際情勢分析かと思いましたが、内容としてはJICA(国際協力機構)の理事長としての仕事をまとめたエッセイとなっています。 ただし、著者は政治学者でありながら日本の国連次席大使も務めたことがあ…

遠藤晶久/ウィリー・ジョウ『イデオロギーと日本政治』

まず、この本のインパクトは帯にも書かれている、「維新は「革新」、共産は「保守」」という部分だと思います。 若年層に政党を「保守」、「革新」の軸で分類されると、日本維新の会を最も「革新」と位置づけるというのです。そして、以下のグラフ(134p図5.…

ジェリー・Z・ミュラー『測りすぎ』

民間企業だけでなく、学校でも病院でも警察でも、そのパフォーマンスを上げるためにさまざまな指標が測定され、その指標に応じて報酬が上下し、出世が決まったりしています。 もちろん、こうしたことによってより良いパフォーマンスが期待されているわけです…

ダニ・ロドリック『貿易戦争の政治経済学』

『グローバリゼーション・パラドクス』で、グローバリゼーションのさらなる拡大(ハイパーグローバリゼーション)、国家主権、民主主義の三つのうち二つしか選び取ることができないとする考えを打ち出したトルコ生まれの経済学者の新著。 タイトルからはトラ…

青木栄一編著『文部科学省の解剖』

一部の人にとっては興味をそそるタイトルでしょうが、さらに執筆者に『現代日本の官僚制』、『日本の地方政府』の曽我謙悟、『政令指定都市』の北村亘、『戦後行政の構造とディレンマ』の手塚洋輔と豪華なメンツが揃っており、精緻な分析が披露されています…

田所昌幸『越境の国際政治』

副題は「国境を越える人々と国家間関係」。移民をはじめとする国境を越える人間の移動について国際政治学の立場から論じた本になります。 移民に関しては、移民がもたらす社会の変化を記述したもの、移民のおかれた劣悪な状況を告発するもの、あるいはボージ…

羅芝賢『番号を創る権力』

鳴り物入りで導入されたマイナンバー制度ですが、そのしょぼさと面倒臭さにうんざりしている人も多いでしょう。行政事務を効率化し、国民にもさまざまな利便性を提供すると言われていたマイナンバーですが、蓋を開けてみればマイナンバーの通知カードをコピ…

小林道彦『児玉源太郎』

ミネルヴァ日本評伝選の1冊で、著者は『日本の大陸政策 1895‐1914』(のちに『大正政変』と改題されて復刊)、『政党内閣の崩壊と満州事変 1918‐1932』などを書いている人物です。 特に『日本の大陸政策 1895‐1914』は、山県有朋とも伊藤博文とも違う桂太郎…

ニコラ・ヴェルト『共食いの島』

アウシュヴィッツの恐ろしさの一つは「合理的」な虐殺のシステムをつくり上げたところにありますが(ただ、ユダヤ人の虐殺はアウシュヴィッツのような強制収容所だけで行われたのではなく、行動部隊(アインザッツグルッペン)による大量射殺によって行われ…

待鳥聡史・宇野重規編著『社会のなかのコモンズ』

2月28日に東京堂書店で刊行イベントがあり、ちょうどその日に読み終わっていたのですが、仕事が忙しかったりウィルス性の胃腸炎になったりで、読了後1月弱たってからの紹介になります。 というわけで、以下はやや大雑把な紹介になりますし、また、イベントで…

野口雅弘『忖度と官僚制の政治学』

タイトルからすると、ここ最近の安倍政権を批判した本にも思えますが、そこは『官僚制批判の論理と心理』(中公新書)で、ウェーバーをはじめトクヴィル、アーレント、フーコー、ルーマンなどを参照しながら官僚機構の肥大化と官僚批判のメカニズムを論じて…

善教将大『維新支持の分析』

ここ最近、「ポピュリズム」という言葉が、政治を語る上で頻出するキーワードとなっています。アメリカのトランプ大統領に、イギリスのBrexit、イタリアの五つ星運動にドイツのAfDと、「ポピュリズム」というキーワードで語られる政治勢力は数多くいるわけで…

ジョージ・ボージャス『移民の政治経済学』

近年は、移民への反発とそれを利用した「ポピュリズム」というものが世界の政治における1つのトレンドとなっています。 一方、日本では昨年、出入国管理法が改正され、政府は否定しているものの、外国人労働者の受け入れに大きくかじを切ったと見ていいでし…

フランチェスコ・グァラ『制度とはなにか』

著者はイタリアの哲学者で、以前に出した『科学哲学から見た実験経済学』が翻訳されています。昨年、『現代経済学』(中公新書)を出した経済学者の瀧澤弘和が監訳していますが、内容的には哲学の本と言っていいでしょう。 ただし、その内容は社会科学と密接…

千田航『フランスにおける雇用と子育ての「自由選択」』

ずっと日本では少子化が大きな問題として認識されています。一時期よりは良くなったとはいえ、2016年の合計特殊出生率は1.44 で、今の人口を維持していくことはできない水準となっています。 少子化は基本的には先進国に共通した問題なのですが、下のグラフ…

大山礼子『政治を再建する、いくつかの方法』

『日本の国会』(岩波新書)が非常に面白かった著者による現在の日本政治についての提言の書ですが、政治学への入門書ともなっていると思います。 叙述のスタイルは違えども、方向性は砂原庸介『民主主義の条件』と似ています。議会制民主主義の行き詰まりに…

加茂具樹・林載桓編『現代中国の政治制度』

著者の一人である梶谷懐氏よりご恵投いただきました。ありがとうございます。 本書はタイトルの通り、現代中国の政治制度についての本なのですが、特徴としては、確固たる「制度」が固まってない内容に見える中国の政治制度を、ピアソンの経路依存の考えを用…

向大野新治『議会学』

衆議院事務総長をつとめる著者による本。本書の売りは主に2点で、1つは長年国会の運営に携わってきた政治観や議会観。もう1つは議会に関する雑学的な知識です。 とりあえず、目次は以下の通りです。 第1章 統治上の意思決定をするのは誰か第2章 政治とは何…

濱本真輔『現代日本の政党政治』

1994年の衆議院の選挙制度改革が行われて以降、05年の郵政解散や09年の民主党による政権交代など、この改革の影響の大きさを感じさせる出来事もありましたが、一方で現状を見ると相変わらず自民党が盤石の強さを示し、野党は分裂しています。 小選挙区比例代…

 ケネス・シーヴ、 デイヴィッド・スタサヴェージ『金持ち課税』

帯に「民主主義は累進課税を選択しない。選択させたのは、戦争のみだった」との言葉がありますが、これは本書の主張を端的に表している言葉といえるでしょう。 20世紀の前半には累進課税が強化されて格差の縮小が見られたが、後半からは累進課税の弱まりによ…

 アマルティア・セン『アイデンティティと暴力』

少し前に読んだ本で感想を書きそこねていたのですが、これは良い本ですね。現代における理想主義の一つの完成形ともいえるような内容で、理想主義者はもちろん、理想主義を絵空事だとも思っている現実主義者の人も、ぜひ目を通して置くべき本だと思います。 …