映画

『オッペンハイマー』

人によってさまざまな解釈ができる作品だと思いますが、自分は政治に興味を持ち、政治的手腕も持っていたが、本職の政治家にはなれなかった科学者の話という側面が印象に残りました。 オッペンハイマーは、原子爆弾という世界を変える兵器をつくってしまった…

『デューン 砂の惑星PART2』

映像、音ともに隙のない映画。さすがドゥニ・ビルヌーブという感じですね。 前作に引き続き、砂の惑星やサンドワームの描き方はいいですし、ハルコネン家の兵士たちが崖の上へと浮き上がるように移動する動きとか、ハルコネン家のファシズム的な祭典のときに…

『夜明けのすべて』

「カムカムエヴリバディ」の安子ちゃん(上白石萌音)とみのるさん(松村北斗)が主演ということでさわやかな恋愛ものを想像する人も多いでしょう。実際、映画の日ということもあって女子高生二人組とかも見に来ていました。 まったく恋愛要素が必要ないドラ…

『哀れなるものたち』

この作品については以前アラスター・グレイによる原作小説を読んでいて、映画化という話を聞いたまず最初の感想は、「あの話を映画化できるの?」というものでした。 以前のブログ記事では、原作小説のあらすじを次のように紹介しています。 怪人的な容貌を…

『窓ぎわのトットちゃん』

遅ればせながら見てきました。 評判通りウェルメイドな映画で、アニメの画も演出も非常にレベルが高い。 昭和の児童画などを参考にしたキャラクターデザインもいいですし、そのキャラがきちんと成長していくところもよくできています。何回かそれまでのトー…

2023年の映画

今年はけっこう映画を見た。ただし、その要因は、長女の習い事で暇になってしまった次女を連れ出すためのものが多く、『アイカツ! 10th STORY 未来へのSTARWAY』、『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』、『仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐』(同時…

『屋根裏のラジャー』

公開2週目にして、シネコンではけっこう小さめの劇場になってしまっていますが、同じスタジオポノックの前作『メアリと魔女の花』に比べると、かなりいいと思います。 『メアリと魔女の花』の大きな欠点であった、魅力的な脇のキャラクター(特に人間以外)…

『ゴジラ−1.0』

まず、『シン・ゴジラ』の後で、それとかぶらないようにしてきた戦略は上手い。 舞台を現代にすればどうしても『シン・ゴジラ』と比較されるし、また、政治を出しても『シン・ゴジラ』と比較されてしまうでしょう。そして、おそらく山崎貴監督は政治とかを描…

『キリエの歌』

アイナ・ジ・エンドが主演で、そのバディ的な役として広瀬すずが出ているという情報を聞き、一種の青春音楽映画を想像しながら見に行ったら、かなりガッツリとした震災映画でもありました。 上映時間が3時間近くある作品になっていますが、これは同じ岩井俊…

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

『ジョン・ウィック』シリーズは第1作をレンタルで見た記憶しかなくて、今作も「どうしようかな?」と思っていたのですが、日本を舞台にしていて、ハリウッドが描くトンチキな日本の姿が出てくると知って観に行ってきました。 そうしたら、道頓堀のネオンか…

『アリスとテレスのまぼろし工場』

00年代のセカイ系とか10年代の深夜アニメの雰囲気を濃厚にたたえた作品で、さらに福島第一原発事故をモチーフにした作品でもあります。設定にはけっこう無理もありますが、それを含めて00〜10年代をギュッと濃縮した作品だという印象を持ちました。 ちなみに…

『兎たちの暴走』

中国の女性監督シェン・ユーが、母娘が娘の同級生を誘拐した実在の事件に着想を得て撮ったという作品。 映画の冒頭は我が子を誘拐された親たちが警察に行くか行かないかで揉めるシーンから始まり、そこから過去に戻って誘拐事件にいたるまでの顛末が示されま…

『バービー』

監督が『レディ・バード』と『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のグレタ・ガーウィグということで期待して観に行ったんですが、期待通りに面白かったですね。 まず、いろいろと解釈したくなる映画ですが、そうした解釈なしでもキュートなマ…

『君たちはどう生きるか』

ようやく見てきましたけど、とにかくリッチなアニメですね。 新海誠の映画の背景は凝ってますし、細田守の例えば『龍とそばかすの姫』の仮想世界の画もすごかったですし、『鬼滅の刃』の戦闘シーンの作画がすごい! という話もわかりますが、この作品の、あ…

『イノセンツ』

ノルウェー人の監督がノルウェーの郊外の団地を舞台に撮ったサイキックスリラーですが、監督(エスキル・フォクト)が大友克洋『童夢』からの影響を公言しているだけあって、これは『童夢』。 特にラストシーンは監督の『童夢』愛が炸裂しており、『童夢』を…

『怪物』

良かったですが、これはどこまで語るべきなのか難しい映画かもしれませんね。 カンヌでクィア・パルム賞を受賞したことに対して、是枝監督からのコメントの歯切れが悪い感じはありましたが、見るとそれも納得できます。 映画としては、まずは小学5年生の我が…

『TAR/ター』

まず、この映画で女性指揮者を演じた主演のケイト・ブランシェットは素晴らしい! ケイト・ブランシェットはこの映画で「マエストロ」と呼ばれる現代のトップ指揮者を演じているわけですが、冒頭のトークショーのシーンから、まさにマエストロにふさわしい佇…

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

子どもと一緒に見てきましたが、小1の次女はゲラゲラ笑ってましたし、楽しい映画でした。 ピーチ姫はウーパーウーマンでマリオ顔負けの大活躍するので、別に「反ポリコレ」というわけではないのですが、インテリに評価されそうな要素をほぼ入れていないのは…

『シン・仮面ライダー』

賛否両論という感じですが、ケレン味の溢れた作品で個人的には楽しめました。 もともと小さい頃は仮面ライダーが苦手で(自分が見たのは村上弘明がやってたやつ)、断然ウルトラマン派でしたけど、『シン・仮面ライダー』と『シン・ウルトラマン』を比べると…

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

今の時期に主要人物を中国系で固めて娘の同性愛などを取り込む意識の高さと、「マサルさんか?変態仮面か?」という意識の低さが同居している怪作。 映画.comのあらすじ紹介は次の通り。 経営するコインランドリーは破産寸前で、ボケているのに頑固な父親と…

『別れる決心』

『オールド・ボーイ』や『お嬢さん』のパク・チャヌク監督の新作。 岩山の頂から転落した男の事件を追う刑事ヘジュンは被害者の妻ソレの反応や行動に引っかかるものを感じて、被疑者として監視するようになるが、その中でだんだんとソレに特別な感情を抱くよ…

『レジェンド&バタフライ』

木村拓哉が織田信長を演じるというと見る前から満腹感がありますが、木村拓哉主演で織田信長をテーマに1本の映画にまとめるという前提の中では、けっこう面白くできたのではないかと思います。 まず、今作の信長は天才でもサイコパスでもなく、最初はカッコ…

『イニシェリン島の精霊』

物語はアイルランドの孤島のイニシェリン島に住むコリン・ファレル演じるパードリックがいつものように友人のコルムを誘ってパブに行こうとしたところ、コルムから無視されるシーンから始まります。 何かコルムを怒らせるようなことをしたのか? 悩むパード…

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

ようやく見てきましたが、映像はさすがでしたね。海を中心とした大自然が活写されているわけですけど、これを現実にある自然そのものではなくて「つくりもの」として作り上げた力というのはすごいと思います。 ただ、自分は普通の3Dで見たんですけど、これは…

『ケイコ 目を澄ませて』

評判がいいので見てきましたが、まず主演の岸井ゆきのが素晴らしく良かったですね。 岸井ゆきのをちゃんと見たのは朝ドラの「まんぷく」くらいで、年齢不詳な感じながら(中学生くらいの年齢から演じてた?)、安藤サクラ、長谷川博己、松坂慶子の間に入って…

2022年の映画

今年は去年よりはちゃんと映画を見た気がします。ただし、相変わらず立川シネマシティでやってないとどうしても見逃しちゃう問題はあって、やはり見ている人に比べれば見れていないんだと思います。 それでも、とりあえずは今年の5本をあげておきます。ちな…

『すずめの戸締まり』(ダイジンの正体について)

『君の名は。』で明らかに東日本大震災のイメージを見据えた映画を作った新海誠が真正面から東日本大震災を描いた作品。 これを少女がイケメンと出会ってそのイケメンが椅子にされて、椅子とともに全国を旅するロードムービーに仕立てるというのが、まずは良…

『アムステルダム』

中心となる3人に、クリスチャン・ベール、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のマーゴット・ロビー、『TENET』のジョン・デビッド・ワシントンを配し、さらにロバート・デ・ニーロや『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレック、そしてなぜ…

『ブレット・トレイン』

原作は伊坂幸太郎の『マリアビートル』、日本の新幹線を舞台にしたアクションもので主演はブラッド・ピットという作品。 新幹線に乗り合わせた殺し屋たちが、大金の入ったブリーフケースをめぐって争うというストーリーですが、そこにはさまざまな思惑や因縁…

『NOPE/ノープ』

人を襲っているらしきチンパンジーの姿が写り、さらに画面が変わって黒人の親子が牧場で馬の調教をしていると、空模様が怪しくなり、空からコインが降ってきて父の頭に直撃して父が亡くなる。 これがこの映画の冒頭のシーンで、監督のジョーダン・ピールにつ…