ノルウェー人の監督がノルウェーの郊外の団地を舞台に撮ったサイキックスリラーですが、監督(エスキル・フォクト)が大友克洋『童夢』からの影響を公言しているだけあって、これは『童夢』。
特にラストシーンは監督の『童夢』愛が炸裂しており、『童夢』を読んだ人なら、「ここで『童夢』来るんじゃね?」みたいな楽しみ方もできると思います。
主人公のイーダはノルウェーの郊外の団地に引っ越してきます。イーダには重度の自閉症の姉のアナがいて、ちょっとヤングケアラー的な役割を担わされています。
引っ越してきた団地はちょうどバケーションのシーズンでもあって閑散としていますが、イーダはそこで移民の子であるベンとアイシャと知り合います。
そして、ベンとアイシャには特異な能力があって…という話になります。
イーダにしろベンにしろアイシャにしろ、子どもたちの世界から爪弾きにされている存在で、ベンとアイシャは片親です。
そうした不遇な境遇の中にいる子どもが特異な力を持ち、子どもならではの残酷さも加わって問題がエスカレートしていく感じです。
『童夢』のようにガス爆発が起こったりするような派手なシーンはなく、ストーリー的には淡々と進むのですが、その分、夏休みの郊外の団地という閑散とした空間をうまく見せながらじわじわと盛り上げていきます。
ヤングケアラー、移民の一人親家庭と社会問題に目配せしているような設定もありますが、やりたいことはやはり『童夢』。ラストシーンを見れば納得すると思います。