『NOPE/ノープ』

 人を襲っているらしきチンパンジーの姿が写り、さらに画面が変わって黒人の親子が牧場で馬の調教をしていると、空模様が怪しくなり、空からコインが降ってきて父の頭に直撃して父が亡くなる。

 これがこの映画の冒頭のシーンで、監督のジョーダン・ピールについてまったく前知識のなかった自分は「これはデビッド・リンチみたいな感じか?」と思いながら、見ていましたが、リンチではないですね。

 リンチにおいて、なんと言っても不気味なのは人間なのですが、本映画において主人公のOJ(黒人の親子の子の方)こそムスッとした人物ですが、妹のエム(エメラルド)は非常に明るくてノリの良い人物であり、途中からこの兄妹を手伝うことになる電気店のエンジェルもいいやつです。

 元子役で今は西部劇のテーマパークのようなものを経営しているリッキーは、なんだか陰のある怪しい人物なのですが、リンチだったらリッキーみたいな人物で溢れているはずです。

 

 ストーリーとしてはOJとエムの兄妹が自宅の上空に「何か」がいるのではないかと思い(ときどき停電し、携帯も使えなくなったりする)、それを撮影できないかと考えます(このあたりが現代的)。

 そこでエンジェルの助けも借りながら家の屋根に監視カメラを設置するのですが、やはり何かがおかしいのです。

 

 途中から、その「何か」は実体として出てきそうな感じになるので、「これはリンチではなくてシャマランなのでは?」という感じになります。

 確かに、この外界から孤立した場所でのホラーと言うとシャマランっぽいのですが、大きな違いはシャマランにはないユーモアがこの映画にはある(シャマランのあれもユーモアと言えるのかもしれませんが…)。

 

 で、後半になるとどんどんと映画は加速していき、『AKIRA』への明らかなオマージュや『エヴァンゲリオン』的なものまで登場して、スケールが大きいのだか、そんなに大きくないのだかよくわからないようなスペクタクルが展開されます。

 

 意外と予備知識がないほうが面白く見れる気がするので、これくらいにしておきますが、映画としては面白と思います。